超能力

吉川 「ユリ・ゲラーっているじゃん?」


藤村 「超能力者の?」


吉川 「そうそう。油淋鶏と関係ないほうの」


藤村 「関係ある方なんているのか」


吉川 「いないと思うけど」


藤村 「なら言うなよ。紛らわしい」


吉川 「元祖スプーン曲げの」


藤村 「スプーン曲げに元祖とか本家とかあるのか」


吉川 「恥ずかしながら本家は俺なんだけど」


藤村 「嘘つけ。しかもなんで謙遜してるんだ。嘘の癖に」


吉川 「まぁ、嘘はそのくらいにして、そのユリ・ゲラーがさ」


藤村 「うん」


吉川 「時計の秒針を止めるって超能力をやってたんだよね」


藤村 「へぇ、超能力でねぇ」


吉川 「恥ずかしながら俺もできる」


藤村 「まじで? 別に恥かしがらなくてもいいと思うけど」


吉川 「まだお互いにそんな仲じゃないから」


藤村 「どんな仲だ。超能力見せ合う仲なんてなりたくないよ」


吉川 「ユリ・ゲラーはね、TVを通じてお茶の間の時計まで止めたらしいよ」


藤村 「それはまた胡散臭い話だなぁ」


吉川 「いや、これがまた止まったの止まらないのってもう大変だよ」


藤村 「実際に止まったの?」


吉川 「ところで飼ってたエビ元気?」


藤村 「なんで突然話をそらすんだ。エビなんて飼ってないし。止まったの?」


吉川 「まぁ、その話はおいおい」


藤村 「今言えばいいだろ! 止まったか止まってないか」


吉川 「え? なにが?」


藤村 「なにがって時計だよ」


吉川 「あぁ、なんだ。急に時計の話するからビックリしたよ」


藤村 「急にしてない」


吉川 「エビの話で盛り上がってたのに」


藤村 「盛り上がってないよ! わかったよ。インチキだったんだろ?」


吉川 「確かにユリ・ゲラーがインチキだと言う人は多かった。でもそんなことはどうでもいいことだよ」


藤村 「どうでもいいのか」


吉川 「問題は俺が世界を騒然とさせるイリュージョニストだということ」


藤村 「どうせそれもインチキなんだろ?」


吉川 「だまらっしゃい! 俺は本家だぞ」


藤村 「何の本家なんだ」


吉川 「そこまでいうなら実際にその目で見ていただこう」


藤村 「イリュージョンを?」


吉川 「うむ。ここから見える風景を一瞬にして雪景色にしてみせよう」


藤村 「なんで急に達人っぽい話し方になってるんだ」


吉川 「目を凝らして見たまえ。一瞬たりとも見逃すでないぞ」


藤村 「はい」


吉川 「いくぞ! キェェェェェ!」


藤村 「……」




































吉川 「どう?」


藤村 「なってた」



暗転

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