麻雀

吉川 「覚えちゃえば簡単なんだよ」


藤村 「だからそれが難しいんじゃない」


吉川 「やってるうちにすぐ覚えるって」


藤村 「言っておくけど俺は物覚え悪いよ」


吉川 「大丈夫。俺だって相当悪いけど麻雀だけはすぐに覚えた」


藤村 「なるほど」


吉川 「まずコレがパイ」


藤村 「まじで!?」


吉川 「いや、そこはそんなにリアクションしなくていい」


藤村 「あ、そうか。へー、これがパイ? 思ったより軽いんだね」


吉川 「安もんだし」


藤村 「匂いは悪くないね」


吉川 「嗅ぐな。そうやって使うわけじゃない」


藤村 「これを渾身の力でぶつけ合う」


吉川 「パイ投げか。そんな麻雀見たことあるか?」


藤村 「ないね」


吉川 「これは優しくつまむ」


藤村 「なるほど。パイを優しくつまむわけですか」


吉川 「わざわざ言い直さないでいい。なんかやらしいな」


藤村 「そしておもむろになめる?」


吉川 「なめない。麻雀をなんだと思ってるんだ」


藤村 「パイはなめないでつまむだけ……と」


吉川 「そこは別にメモとらなくてもいいだろ」


藤村 「なめたらチョンボ?」


吉川 「いや、別になめたっていいけど、なめてどうするんだ?」


藤村 「にやける」


吉川 「なめた後のお前の動向は聞いてない。なんでなめるんだ」


藤村 「未知の物はとりあえず口に含んでみないと気がすまない性質なんだよ」


吉川 「赤ちゃんか」


藤村 「で、パイをなめた後はどうするの?」


吉川 「かたくなになめる気だな。とりあえず役を作る」


藤村 「そう言うのは得意」


吉川 「役、知ってるの?」


藤村 「オイ! キタロー」


吉川 「それはイーピンだ。鬼太郎の親父じゃないぞ」


藤村 「お~い、鬼太郎どぉ~ん」


吉川 「一反木綿じゃないから。白だから」


藤村 「ぬ~り~か~べ~」


吉川 「牌を積むな」


藤村 「俺のゲゲゲ小劇場にケチをつける気か!」


吉川 「そんな寸劇見せられても困る」


藤村 「お前が役を作れって言ったから」


吉川 「そうじゃない! そんな麻雀みたことあるか?」


藤村 「ないね」


吉川 「役って言うのはだな、例えば数字を順番に並べるとか、同じのを集めるとかして決められた形を作るんだ」


藤村 「なんだよ。そういうのは先に言ってくれよ。目玉の親父軍団」


吉川 「まぁ、ピンズを集めるって意味では間違ってはいない」


藤村 「その目玉の親父トリオをくれ」


吉川 「あぁ、他人の捨て牌が欲しい時は鳴けばいい」


藤村 「ううん。もう泣かないって決めたの。強い女の子になるんだ♪」


吉川 「勝手に決めてくれ。そうじゃないんだよ。煩わしいなぁ」


藤村 「じゃ、今日だけ泣いてもいい?」


吉川 「まだやってるのか。いいからポンをしろ」


藤村 「ポンポコポーン!」


吉川 「もうそれでいいから」


藤村 「見捨てられた。ゴメン。今のは自分でもあんまりだと思ってる」


吉川 「別に怒ってないから」


藤村 「ポンポコポーン!」


吉川 「あぁもう、うざいな! なんだお前は」


藤村 「ふふふ、ある時は謎の紳士、そしてまたある時は謎の紳士、かくしてその実態は!」


吉川 「謎の紳士だろ」


藤村 「なぜそのことを!」


吉川 「もういいから。だいたい覚えた?」


藤村 「謎の紳士ちょっとショック」


吉川 「面倒くせーやつだなぁ。ごめん。まさか謎の紳士だとは思わなかった」


藤村 「ふふふ。実は謎の紳士の正体は麻雀マンだったのです」


吉川 「げげぇ! 麻雀マン」


藤村 「さ、ふざけてないで続き続き」


吉川 「なんだよ! 乗った瞬間それか!」


藤村 「これこれ。お戯れがすぎますぞ」


吉川 「くそぉ。まぁ、でも大体こんな感じでゲームを進めていけばいい」


藤村 「わかった。で、どうすれば勝ち?」


吉川 「役を作ってあがればいい」


藤村 「わかった。さっそくやろう」


吉川 「本当にわかってるのか?」


藤村 「よし、リャンメン待ちだ」


吉川 「もうか! 手を作るの早いな」


藤村 「たっちゃん、かっちゃん、南を甲子園に連れてって!」


吉川 「やっぱりわかってなかった」


藤村 「キキーッドン!」


吉川 「あぁ! かっちゃん!」


藤村 「綺麗だろ……まるで眠ってるみたいだろ。死んでるんだぜ、こいつ」


吉川 「あぁ! かっちゃんの顔の上に白を置かないで!」


藤村 「その南ロン!」


吉川 「南。泣いて上がりですか」



暗転

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