探偵
探偵 「犯人はあなたですね。吉川さん」
吉川 「な、なにをいってるんだ君は! 証拠でもあるのか?」
探偵 「証拠? 証拠ならありますよ」
吉川 「ま、まさか」
探偵 「そう。そのまさかです」
吉川 「なんだと!?」
探偵 「いやぁ。今回はさすがの私も少々てこずりました」
吉川 「くっ……」
探偵 「まさか……、ねぇ?」
吉川 「なんだ! なんだその口ぶりは」
探偵 「だってまさか……。うぷぷぷ」
吉川 「笑うなっ!」
探偵 「だって、まさかなんだもん」
吉川 「あー、なんかむかつくな。何なんだお前」
探偵 「探偵です」
吉川 「もういいから、証拠早く出せよ」
探偵 「いやいや、そんなに焦らなくても」
吉川 「焦るよ! 俺犯人呼ばわりされてるんだよ?」
探偵 「だって犯人じゃん」
吉川 「だから証拠を出せって!」
探偵 「出すとか出さないとかは問題じゃない!」
吉川 「え? いやいや、それが問題でしょ?」
探偵 「え? そう?」
吉川 「そうだよ。なんで巧みに話題すりかえてるの?」
探偵 「もうそういうレベルとかじゃないじゃん?」
吉川 「どいうレベルになっちゃってるんだ」
探偵 「もうさ、お互い大人なんだし、話し合いでなんとかしない?」
吉川 「なんで!? 大人とか関係ないじゃん」
探偵 「ところがこの事件には大いに関係があるのですよ」
吉川 「なにっ!?」
探偵 「ある意味、事件の鍵と言ってもいい!」
吉川 「大人が?」
探偵 「そう。しかしまぁ、今回は特に語りませんがね」
吉川 「語ってよ! なにその思わせぶりは。鍵ならちゃんと語ってよ」
探偵 「そういう気分じゃないの」
吉川 「気分とかじゃなくてさ」
探偵 「もうなんていうかね、そういう空気じゃないんだよ。なんだお前、空気読めないなぁ」
吉川 「え……なんか、俺が悪いみたいになっちゃってるの?」
探偵 「そういうところも含めて犯人だよ」
吉川 「えー、そんなの含めないでよ。なんか納得いかねー」
探偵 「証拠とかなんつーか、もうダサいね。全体的にダサダサ」
吉川 「ダサくても証拠は大切でしょ」
探偵 「そういう考え方がダメなの。もっとクリエイティブに、そしてロマンチックに」
吉川 「いや、ロマンチックって言われても……」
探偵 「もうある意味、気分で決めちゃおう! みたいなね」
吉川 「気分で犯人にしないでよ」
探偵 「もう、あなた気持ちの時点で負けてるわけ」
吉川 「いやいや、負けてないよ」
探偵 「もっとさ、トータルフットボールの精神で」
吉川 「意味わからないよ。なにその精神は」
探偵 「なにって……トータルなアレじゃないの?」
吉川 「自分もちゃんと意味わかってないじゃん」
探偵 「そういうことは問題じゃない。問題なのは証拠」
吉川 「戻った! それ、俺が言ってたやつじゃん」
探偵 「ふふふ……ついに尻尾を出しましたね吉川さん」
吉川 「え……」
探偵 「犯人はあなたです! 吉川さん」
吉川 「え……。ちなみに、なんで?」
探偵 「なんでも!」
吉川 「そんな! なんだよ、なんでもって!」
探偵 「もう決めちゃったからダメ」
吉川 「ダメとか言われても、え? なにこれ? 捜査じゃないじゃん」
探偵 「わかった。じゃ、あれだ。ジャンケンで決めよう」
吉川 「なんで!? なにがわかったの?」
探偵 「最初はグーだから」
吉川 「いやいや、最初とか最後とかの問題じゃなくてジャンケンでなにを決めるの?」
探偵 「いいからいいから」
吉川 「全然よくない!」
探偵 「ジャンケンポン!」
吉川 「はっ! つい反射的に出してしまった」
探偵 「ほら、私の勝ちです。あなたが犯人です」
吉川 「いや、そんなので決めないでよ」
探偵 「吉川さん、なんであなたはグーを出したんですか?」
吉川 「……クセです」
探偵 「おそらく犯人もグーを出したと思われます。なぜなら、犯人はまだ証拠品を握っていたからだ!」
吉川 「クッ……」
探偵 「残念でしたね。私でなければ見抜けなかったはずです」
吉川 「わかりました。私が……犯人です」
探偵 「あなたの不幸は私と偶然居合わせてしまったことです」
吉川 「うぅ……」
探偵 「手相見探偵と呼ばれたこの私と!」
吉川 「え? 手相?」
探偵 「え? 違うの?」
吉川 「ちょ、今のなし! ノーカンだよ。もう一回!」
探偵 「ダメです。一件落着です」
吉川 「クソォ! 納得いかない」
暗転
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