ヒーロー

吉川 「ヒーローと言えばビームだよな」


藤村 「ずいぶん乱暴な定義の仕方だな」


吉川 「ビームの出ないヒーローなんて粒の入ってないあんこみたいなもんだよ」


藤村 「別にこしあんもあんこだろ」


吉川 「俺は粒派」


藤村 「どの派閥に属してようが知ったこっちゃないけど」


吉川 「で、ビームが出ればヒーローと言うことでよろしいですな?」


藤村 「よろしいというか、そう言いたいんならそれでいいんじゃない?」


吉川 「じゃぁ、俺は今日からヒーロー」


藤村 「なにそれ」


吉川 「実は出ました。ビームが」


藤村 「ビームってなんだかわかってるの?」


吉川 「わかってるよ。ビビビビーてなって光って痛いやつだよ」


藤村 「また適当な」


吉川 「悪いやつらに効き目バツグン」


藤村 「殺虫剤っぽい」


吉川 「昨日ね、練習してたら急に出るんだもんビックリしちゃった」


藤村 「いい大人なのにビームを出す練習してたことにビックリだよ」


吉川 「これから俺のことビームマンて呼んで」


藤村 「やだよ。なんだ、その安直なネーミングは」


吉川 「もしくはビームメン」


藤村 「なんで複数形なんだ。ちょっと麺類っぽいし」


吉川 「女の子はビームガール」


藤村 「女の子はって言い切られても」


吉川 「なに? 信じてないの?」


藤村 「うん」


吉川 「ビックリした。ビックリしてビーム漏らしそうになった。なにその食い気味な返事は! 信じろよ。ビームメンの活躍を信じろよ!」


藤村 「まだ活躍してないじゃん」


吉川 「じゃ、ちょっとだけ出してみようか? 当たったら間違いなく死ぬけど」


藤村 「当てないでよ。なんで殺そうとするの?」


吉川 「だってビームだよ? 油断すると死ぬくらいの威力はある」


藤村 「威力は凄いかもしれないけど、なんで当てる気マンマンなんだ」


吉川 「ビームメンの活躍を信じない悪いやつだから」


藤村 「わかった。じゃ、信じるから」


吉川 「目が嘘ついてる」


藤村 「なんだよ。いいじゃんそのくらい」


吉川 「心のそこから忠誠を誓え!」


藤村 「とんだファシズムだ。ヒーローとは思えない」


吉川 「悪口を言うやつにはビームだぞ」


藤村 「すみません。信じます」


吉川 「よし、お前をビームメン二号にしてやろう」


藤村 「それはさすがに遠慮する」


吉川 「大丈夫。だれでも30分のエクササイズでビームが出せるようになるから」


藤村 「そんなにお手軽だと余計にいやだ」


吉川 「便利ですぞー。ちょっと悪いやつに命を狙われた時とか」


藤村 「そんなのちょっとというレベルで起きない」


吉川 「二号にならないならビームの餌食になってもらう」


藤村 「やだよ。餌食になんてなりたくない」


吉川 「喰らえ! ビーム!」


藤村 「わぁ」


吉川 「あちっ!」


藤村 「だ、大丈夫?」


吉川 「ビーム出るのはいいんだけど、熱くて」


藤村 「うわぁ。やけどしてんじゃん」


吉川 「痛いよぉ」


藤村 「まったく。手の焼けるやつだなぁ」



暗転

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