中身

山谷 「なんで邪魔するんだよぉ……」


藤村 「くそっ! これでもくらえ」


吉川 「よせ、グレネードは!」


藤村 「もう遅いっすよ!」


吉川 「中のやつを生きたまま保護しろというのが上からの命令だ」


藤村 「簡単に言ってくれちゃって。……くっ」


吉川 「なっ」


藤村 「まるでダメージがない。なんだあのアーマスーツは」


山谷 「なんで邪魔するんだよぉ……」


吉川 「来るぞっ」


藤村 「もう後がないっすよ」


山谷 「なんで俺の邪魔をするんだ」


藤村 「あれしか言えないのかあいつは」


吉川 「俺が後ろから回り込む」


山谷 「お前ら死ね」


藤村 「なにっ!?」


吉川 「早いっ」


山谷 「死ね……死んじゃえよ」


藤村 「うぐぐぐぐ……」


吉川 「藤村っ」


藤村 「ぐぐぐ……この馬鹿力が……」


吉川 「もう生きてなんて言ってられないな。延髄壁をぶち破らせてもらう」


藤村 「上から怒られてもも知らないっすよ」


吉川 「お前が死ぬよりマシだ」


山谷 「俺は生活がしたいだけなんだ。邪魔しないでくれよ」


吉川 「でぇい!」


山谷 「っ!?」


吉川 「……」


藤村 「どうしたんですか? 吉川さん」


吉川 「中身が……ない」


藤村 「え……」


山谷 「俺はカーテンを開けたいんだ」


吉川 「山谷……お前、AIだな」


山谷 「違う! 俺は人間」


吉川 「お前の肉体などない! お前はアーマスーツに宿ったAIだ」


藤村 「……ぐっ。ゲホッゲホッ」


山谷 「俺が……? AI……?」


吉川 「お前は自立思考型AIだ」


山谷 「俺は人間だ!」


吉川 「お前の肉体がどこにある!」


山谷 「俺は……AIなのか?」


藤村 「そういうカラクリかよ」


山谷 「俺は……ただ、朝がきたら窓のカーテンを開けて、朝日を入れる。そんな生活がしたかっただけなのに」


吉川 「お前に生活など必要ない」


山谷 「俺は……俺は……俺……オレ……オ……」


藤村 「……?」


吉川 「シャットダウンした」


藤村 「自立思考型AIか……」


吉川 「ふぅ……帰ったらなんて報告したらいいんだ」


藤村 「逃げられちゃったって言います?」


吉川 「そうするか」


藤村 「生活がしたかっただけか……」


吉川 「藤村」


藤村 「はい?」


吉川 「カーテン、開けてやってくれないか」


藤村 「……はい」



暗転

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