怒り

吉川 「貴様っ! 仲間には手を出すなといっただろ」


藤村 「ほぉ、まだ息が合ったのか」


仲間 「吉川……俺のことはかまうな」


吉川 「自分のことならまだよかった。しかし仲間を傷つけられては……」


藤村 「なっ!? なんだこのオーラは!?」


仲間 「吉川! 怒っちゃダメだ!」


吉川 「すまない! だが……もう誰も俺を止められない」


仲間 「地球がどうなってもいいのか!?」


藤村 「そっ!? そんな規模なの?」


吉川 「ついに俺を怒らせたな」


藤村 「うわぁ。そんなつもりじゃ……」


吉川 「謝ってすむ問題だろっ!」


藤村 「……だろ? いや、だろって言われても……ごめんなさい」


吉川 「許さん!」


藤村 「えー! 自分で言ったくせに!」


吉川 「俺は怒りの力により三倍になる!」


仲間 「吉川ーッ!」


吉川 「うぉぉぉおおお!!」


藤村 「うわぁ!」


吉川 「……ふぅ」


藤村 「……え? 終わり?」


吉川 「どうだ!」


藤村 「いや、どうって言われても……」


吉川 「三倍だ!」


藤村 「三倍って……なにが?」


吉川 「何ってお前……ほら……え~と……そんなこと聞くなよ!」


藤村 「いやいやいや、自分で言ったんじゃん」


吉川 「そんなの聞かれたことなかったから考えてなかった」


藤村 「えー。自分の能力でしょ?」


吉川 「とにかく三倍なんだよ!」


藤村 「とにかくって言われても、なにがどう三倍なんだか……」


吉川 「か……価格?」


藤村 「なんだ価格って! 値段がついてたのか」


吉川 「いや、価格じゃなかった。違う。そういうのじゃない」


藤村 「びっくりしたー。何を言い出すのかと思った」


吉川 「え~と……体毛が……」


藤村 「体毛が三倍なの!? 毛深くなっただけ?」


吉川 「違うよ! 毛深くなってない! むしろツルツルだよ!」


藤村 「いや、別にツルツルだろうとどうだっていいんだけど」


吉川 「あれだ。え~と……白さ?」


藤村 「なんだ。色白か」


吉川 「あと柔らかさも」


藤村 「急に洗剤みたいになった」


吉川 「そうじゃねーな。なんだ。え~と、わかんだろ?」


藤村 「いや、わからないです」


吉川 「とにかく三倍なんだよ」


藤村 「とにかくって言われても……」


吉川 「あれだ。怒りが三倍! そう、怒り!」


藤村 「いや、怒りによって増えたんでしょ? それがさらに三倍になっても、余計怒っただけじゃないすか?」


吉川 「だから、凄い怒ってるんだよ!」


藤村 「いや、凄い怒ってるのはわかってますよ。それで何かが三倍になったんでしょ?」


吉川 「う、うん。なったよ。三倍」


藤村 「本当は何も変わってないんじゃないの?」


吉川 「バカ! ちゃんと三倍になってるよ! 正確に言うとおよそ三」


藤村 「全然正確に言ってない。ゆとり教育の円周率みたいなこと言い始めた」


吉川 「ほら、見てわかんだろ? もう三倍っぽいじゃん」


藤村 「っぽいって言われも……だからなにが?」


吉川 「……大きさだよ」


藤村 「いやいや、大きさ全然変わってないでしょ! 等身大でしょ」


吉川 「違うよ! なんていうかな、器の大きさだよ」


藤村 「器って……じゃ、ごめんなさい」


吉川 「許す!」


藤村 「三倍だぁ!」



暗転



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