花粉症マスク

吉川  「あ~ぁ、正義の味方なんていなよなぁ」


花マス 「花粉症マスクただいま参上!」


吉川  「……」


花マス 「とうっ!」


吉川  「……え?」


花マス 「参上!」


吉川  「……正義の味方なんていないよなぁ」


花マス 「いやいやいや。参上! 参上してますよ!」


吉川  「正義の味方?」


花マス 「いかにも」


吉川  「いや、ただの花粉症のマスクした人じゃん」


花マス 「これは変装」


吉川  「えー」


花マス 「タイガーマスクとかそういう関連だと思っていただきたい」


吉川  「だって、普通のマスクじゃん」


花マス 「バカ! 全然普通じゃないよ。花粉や粉塵を99.5%もカットするんだぞ」


吉川  「そんなこと高らかに宣言されても……薬局で売ってるやつじゃん」


花マス 「すごいいいやつだぜ! 立体マスク。……ックション!」


吉川  「やっぱりただの花粉症の人だ」


花マス 「ところで、何かお困りか?」


吉川  「いや、お困りって言うか、あなたじゃなぁ」


花マス 「相談してみればいいじゃん! 気が楽になるかもしれないじゃん」


吉川  「そりゃそうだけど……」


花マス 「……ックション!」


吉川  「なんか、どっちかというとあなたの方がお困りだよね」


花マス 「……聞いてくれる?」


吉川  「えー。なにそれ。自分さっき正義の味方っぽいこと言ってたくせに」


花マス 「正義関連の色々な悩みとかあるんだよ」


吉川  「そうなのか」


花マス 「いやね。もう最近花粉がひどくてさぁ」


吉川  「案の定正義関連じゃなかった」


花マス 「これから盛り上がるところ! 先を急がない」


吉川  「ハァ、すみません」


花マス 「先日も怪人と戦ったんだわ」


吉川  「戦ったのっ!? まじで?」


花マス 「マジもマジ。大マジだよ」


吉川  「ちゃんと正義もしてるんだ」


花マス 「技とかもあるんだよ? 花粉症マスクタイフーンとか」


吉川  「なにそれ! 強そう」


花マス 「まぁ、大きなくしゃみなんだけどさ」


吉川  「わぁ。ものすごい名前負けした技だ」


花マス 「花粉症マスクジェット水流とかね」


吉川  「まさかそれも」


花マス 「うん。要するに鼻水なんだけどさ」


吉川  「ひどく屈辱的な技だな」


花マス 「でさぁ。頑張って勝つじゃん?」


吉川  「勝っちゃうんだ? 怪人相手に」


花マス 「勝つって言うか、……最終的には示談みたいな感じで?」


吉川  「やな終わり方だなぁ。爽快感がまるでない」


花マス 「でもあんまり感謝されないんだよねぇ」


吉川  「そりゃ、されないよなぁ。ただの花粉症の人だもん」


花マス 「マジ泣けてくるよ」


吉川  「そりゃ、気の毒に」


花マス 「いや、花粉で涙出るだけなんだけどさ」


吉川  「同情し損だ」


花マス 「で、ぶっちゃけるとさぁ。俺本当は花粉症じゃないのよ」


吉川  「ものすごいぶっちゃけかたした」


花マス 「でも花粉症じゃないって言うとなんかデリケートじゃないみたいな風潮になってるじゃん?」


吉川  「そんなこともないと思うけど」


花マス 「だから、花粉症の振りしてがんばってるんだけどさぁ」


吉川  「あの、だったら花粉症マスクっていうコンセプト替えたらどうですかね?」


花マス 「あー! それ気づかなかったわ」


吉川  「気づくだろ。しょっぱなに普通気づくだろ」


花マス 「逆転の発想だなぁ」


吉川  「比較的素直な発想だと思うけど」


花マス 「ありがと。じゃ、そっちの方向性でがんばってみるよ!」


吉川  「お役に立ててうれしいです」


花マス 「では、さらばだ!」


吉川  「……結局、俺の話は聞かずじまいか。やっぱり正義の味方なんていないよなぁ」


風邪マス「とうっ! 風邪マスク! ただいま参上!」


吉川  「だから、そうじゃないだろ!」



暗転

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