吉川 「(あれ? おーい)」


藤村 「(おーい)」


吉川 「(なんか変だな。おーい)」


藤村 「(おーい、誰かー)」


吉川 「(あ! 人だ)」


藤村 「(あ! 人だ)」


吉川 「(よかったぁ。人に会えて)」


藤村 「(なんだこの人、口をパクパクさせて錦鯉の物真似か?)」


吉川 「(すみません、気がついたらこんなところにいて。ここはどこなんですか?)」


藤村 「(間違いなく錦鯉の物真似だな。どうしよう、自信マンマンでやってる。ここは笑ってあげるべきかなぁ?)」


吉川 「(あの……聞いてます?)」


藤村 「(ははは。似てるー)」


吉川 「(ひょっとして、聞こえてない?)」


藤村 「(似てる似てる)」


吉川 「(そうか! なんか変だと思ったんだ。この部屋には音がない!)」


藤村 「(にてるー。……いい加減しつこい人だな)」


吉川 「(ということは、私の声も相手に伝わってないということか。それならジェスチャーだ! ココは、どこですか?)」


藤村 「(しつけー。無視しよう)」


吉川 「(ココは、どこ……って見てない!)」


藤村 「(今度はまた新しい物真似やりはじめた。なんだろう)」


吉川 「(見てよ! 会話しようよ!)」


藤村 「(なんだよ。また錦鯉か)」


吉川 「(ちょっ……気づいてよ! 声が聞こえないんです! こーえーがー!)」


藤村 「(わかったよ。似てる。似てる。そんな必死になってやらなくても)」


吉川 「(あ、なんとなくわかってもらえたみたい。)」


藤村 「(あ、納得したみたい)」


吉川 「(あの~、どこから、来たんですか?)」


藤村 「(なに? あっちへ行け?)」


吉川 「(ここは、どこですか?)」


藤村 「(なんなんだ。リアクション大きいなぁ。ひょっとして外人か?)」


吉川 「(どうしよう。伝わってなさそう)」


藤村 「(どうしよう。俺、英語ぜんぜんできないや。時間を聞くときの英語が、掘ったイモいじってるの。って言うのは覚えてるんだけど)」


吉川 「(なんとかしてここから出ないと。そのためにはなんとしてでもこの人とコミュニケーション取らないと)」


藤村 「(英語で話し掛けられたらどうしよう。水平リーベ僕の船は英語じゃないしなぁ)」


吉川 「(……待てよ? ひょっとして、音は伝わっているけど意味が伝わってないんじゃないか? つまり、相手は……外人!)」


藤村 「(でも、せっかくの英語で聞いたところで伝わらなかったらどうしよう)」


吉川 「(やばい! 英語なんて全然できないよぉ! せめてフランス語なら……やっぱりできないよぉ!)」


藤村 「(あー! 神様! どうかペラペラしゃべれるようにしてください)」


吉川 「あ」


藤村 「あ!」


吉川 「はははは……ハロー?」


藤村 「掘ったイモいじってんの?」


二人 「やっぱり!」



暗転

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