ピザ

藤村 「腹減ったなぁ」


吉川 「腹減ったね」


藤村 「な、な、ピザとらね?」


吉川 「お! お前もたまにはいいこと言うなぁ」


藤村 「なんだよ。その、俺は普段まるでいいこと言ってないような言いようは」


吉川 「まぁ言ってないね」


藤村 「言ってるよ! 豆知識とか連発してるよ」


吉川 「えー」


藤村 「じゃ、ピザの豆知識ね」


吉川 「うん」


藤村 「ピザと言えばパスポートの入国査証としてお馴染みですが……」


吉川 「待て待て。そんなのお馴染んでない」


藤村 「そう?」


吉川 「それはビザだよね? ピじゃなくてビ」


藤村 「あ~、地方によってはそう発音するところもあるかもね」


吉川 「地方とかそういう問題じゃない。VISAなんだからピとは読まない」


藤村 「そうなの?」


吉川 「ビックリしたよ。そんな強引なこじつけ初めて聞いた」


藤村 「我が家ではおなじみだった」


吉川 「歪んだ家庭環境だなぁ」


藤村 「で、パスポートの豆知識なんだけど」


吉川 「知らない間にパスポートの話にすりかわった」


藤村 「すごいよ? 丸秘情報」


吉川 「別に興味ないよ」


藤村 「今だから語れる。偽造豆知識」


吉川 「今だってダメだよ! 犯罪じゃん」


藤村 「犯罪スレスレね」


吉川 「そんなスレスレを歩きたくないよ」


藤村 「スレスレであっち側」


吉川 「犯罪の側か。向こう側ならスレスレの意味がない。別におおっぴらでもいいよ」


藤村 「悪巧みしたら腹減った」


吉川 「別に俺は悪巧みした覚えはない」


藤村 「なぁ、ピザ取ろうぜ」


吉川 「お! 人生二度目のいいこと言った」


藤村 「もっと言ってるよ! 失敬だな」


吉川 「でも、チラシがないよ」


藤村 「えー! 常備しとけよ」


吉川 「そんな、ピザ頼むなんてこと考えてなかったもの」


藤村 「こんな時に宅配チラシ屋とかあればいいのになぁ」


吉川 「いや、それはただの二度手間じゃない?」


藤村 「各種チラシを届けてくれるの。便利ー」


吉川 「電話で呼ぶんでしょ?」


藤村 「そう」


吉川 「その宅配チラシ屋の電話番号は?」


藤村 「それは……なんとなく天から舞い降りてくるんだ」


吉川 「舞い降りないよ! なんで急にロマンティックになってるんだ」


藤村 「あ、電話番号案内で聞けばいいんじゃね?」


吉川 「それだ! 人生三度目!」


藤村 「いい加減、俺のいいこと言いまくり人生を認めろ」


吉川 「よし、電話しよう」


藤村 「宅配チラシ屋の番号だな?」


吉川 「違うよ! そんな商売ない!」


藤村 「なきゃ作ればいい」


吉川 「俺たちの想像の産物だろ? そうじゃなくて、直でピザ屋の番号を聞け」


藤村 「お、今日はなんだか冴えてますな」


吉川 「普通だよ。そっちが冴えてなさすぎだ」


藤村 「よし! ピザ屋の番号わかったぞ」


吉川 「やったー! さっそく注文だ」


藤村 「これで空腹ともおさらばだな」


吉川 「なにを頼もうかなぁ」


藤村 「え~と……まず、住所だって」


吉川 「……住所」


藤村 「……ここどこ?」


吉川 「わからない。密入国したから」


藤村 「スレスレだったんだけどなぁ」



暗転

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