殺し屋

吉川  「やめときな。ブローニングは背中に感じやすいんだ」


殺し屋 「死ね。吉川!」


吉川  「お前じゃ俺をやれない」


殺し屋 「やってやるさ……」


吉川  「若いな。誰に雇われた?」


殺し屋 「そんなこと言うわけないだろ」


吉川  「そりゃそうだ。しかし、こうも若いやつが出てくるとは、俺もなめられたもんだ」


殺し屋 「お前のことは知っている」


吉川  「ほぉ」


殺し屋 「伝説の殺し屋だと、この商売はじめたときから聞かされつづけてたぜ」


吉川  「伝説か。ついに俺も過去の人間だな……」


殺し屋 「お前を殺して、俺は名をあげる」


吉川  「俺をやったところで、名前なんざあがらねーよ」


殺し屋 「そうだとしてもやってやるさ」


吉川  「若いの。こういう話を知ってるか?」


殺し屋 「なんだ」


吉川  「昔、ある若い男がいてな、そいつはどうにかして名をあげようと必死だった」


殺し屋 「……」


吉川  「そしてあるとき、その道では伝説とされている男に無謀にも勝負を挑んだ」


殺し屋 「……まるで今の俺みたいだ」


吉川  「そうだな」


殺し屋 「それで、どうなったんだ?」


吉川  「なにが?」


殺し屋 「なにがって、話の続きだよ」


吉川  「to be continued」


殺し屋 「いや、続かないでよ! 今教えてよ」


吉川  「実はここからがすっごい盛り上がる」


殺し屋 「だから教えてよ!」


吉川  「あ~思い出してもソワソワしちゃう。うぷぷ」


殺し屋 「なんだよ! なに一人で楽しさ噛み締めちゃってんだよ!」


吉川  「えー!? まさか、あのキャサリンちゃんがっ!?」


殺し屋 「誰だキャサリンちゃんて、どんな展開になってるんだ」


吉川  「聞きたい?」


殺し屋 「うん。超聞きたい」


吉川  「どうしよっかな~」


殺し屋 「なにそれ!? 作戦? じらし作戦?」


吉川  「ここから先は、ちょっとエッチなシーンも出てくる」


殺し屋 「えー! そういうのなの? キャサリンちゃんと?」


吉川  「バカ! キャサリンちゃんはそんな女じゃねーよ」


殺し屋 「いや、そんなこと言われたって知らないもの」


吉川  「いやぁ、しかしジェダイの戦士たちがあんなことになるとは……」


殺し屋 「え? スターウォーズなの? そういう話だったの?」


吉川  「ゴメン……。思い出したら涙が止まらなく」


殺し屋 「一大感動叙事詩だ」


吉川  「忍法対決のシーンは思い出しても血沸き肉踊るなぁ」


殺し屋 「あ~もうっ! すっごい気になる」


吉川  「どうだ? 俺を殺したらこの続きは聞けないぜ」


殺し屋 「ちくしょう。俺にはできない!」


吉川  「まぁ、そんなに気を落とすな。若いの、お前なかなかいい筋してるぜ」


殺し屋 「同情はやめてくれ」


吉川  「同情なんかじゃない。お前のその殺気、そして身のこなし、キュッとあがったヒップライン。どこをとっても一流かそれ以上だ」


殺し屋 「ヒップラインまで……」


吉川  「俺をやれなくても気にするな。その毛深いところもなかなかチャーミングだぜ」


殺し屋 「そ、そう?」


吉川  「あぁ。グッとくるね」


殺し屋 「そんなぁ、それほどでも……。しかし、一つだけ聞かせてくれ」


吉川  「なんだ?」


殺し屋 「なんであなたのような人が伝説の殺し屋と? もう殺しはしないんですか?」


吉川  「すでに、褒め殺したさ」


殺し屋 「……やっぱり死ねー!」



暗転

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