赤い糸

藤村 「それでたどってきたんだ?」


吉川 「そう。だって気になるじゃん」


藤村 「確かに気になるけどなぁ。いい年こいて……」


吉川 「赤い糸だよ? 運命の人がつながってるわけじゃない?」


藤村 「そうかもしれないけどさぁ」


吉川 「こうしてる間にも運命の美女が俺を待ってるんだよ」


藤村 「美女じゃなかったらどうするんだよ」


吉川 「え?」


藤村 「勝手に美女って決め付けてるけどさ、美女じゃなかったらどうするんだよ」


吉川 「美女じゃないはず無いだろ。俺の運命の人だぞ?」


藤村 「根拠ないじゃん。思い込みじゃん。全然タイプじゃなかったらどうするの?」


吉川 「でも俺、割と守備範囲広いんだよ」


藤村 「なんとかゲルゲとかいう名前だったらどうするんだ」


吉川 「それはすでに人間ですらないよね。怪人の名前だよね?」


藤村 「結婚したら吉川ゲルゲだぞ」


吉川 「そういう名前になるんだ。いや、多分結婚までこぎつけないと思うよ」


藤村 「わからないぞぉ。なんたって運命の人だからなぁ」


吉川 「どうしよう。……やっぱりたどるのよそうかな」


藤村 「お前がたどらなくても向こうがたどってきてるかもしれない」


吉川 「えー」


藤村 「着々とゲルゲが近づきつつあるんだ」


吉川 「どうしよう!」


藤村 「切っちゃば?」


吉川 「これ、なんか切れないんだよ。伸び縮みするし」


藤村 「見せてみ」


吉川 「ほら」


藤村 「吉川、お前……これ……」


吉川 「なに?」


藤村 「しめつけすぎちゃって小指紫色になってるじゃん」


吉川 「わぁ、本当だ」


藤村 「なんかすっごい冷たくなってるぞ」


吉川 「どうしよう。このままじゃ腐って落ちちゃうよぉ」


藤村 「くっそぉ! 全然はずれないじゃないか」


吉川 「無理だよぉ」


藤村 「なんてこった」


吉川 「このまま、俺は小指が落ちてゲルゲに食われる運命なんだ」


藤村 「えーい! こうなったら!」


吉川 「藤村! どうする気だっ!?」


藤村 「こうやって……、ほら!」


吉川 「お前、自分の小指に……」


藤村 「吉川。……これでお前の運命の人は、俺ってわけだ」


吉川 「藤村……」


藤村 「吉川……」


吉川 「ごめん、タイプじゃないわ」


藤村 「守備範囲!」



暗転

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