せれもにー

吉川 「あのさ」


藤村 「なに?」


吉川 「セレモニーとサルモネラって似てない?」


藤村 「似てない」


吉川 「えー! 似てるよぉ。妖怪セレモゲラ」


藤村 「別のものになっちゃってる。ゲはどこからきたんだ」


吉川 「セレモニーで全員食中毒になる妖怪」


藤村 「妖怪の仕業にしては地味な上に現実的過ぎる」


吉川 「妖怪セレモニーング娘。」


藤村 「なんだ、その気持ち悪い語感は」


吉川 「なんか、セレモニーでいっぱいいる娘」


藤村 「普通! 娘くらい普通にいるだろ。全然妖怪じゃない」


吉川 「妖怪セレえもん」


藤村 「何が言いたいんだ」


吉川 「わ~ん、セレえもん! ジャイモニーがいじめるんだよぉ」


藤村 「ドラえもんだったのか。全然ピンと来なかった」


吉川 「しょうがないなぁ、のびモニーくんは。どこでもドレモニー!」


藤村 「もう、似せようとか、そういう意思が感じられなくなってきた」


吉川 「大長編セレえもん、のびモニーのセレモニー」


藤村 「全然冒険とかなさそう」


吉川 「原作、藤子・C・不二雄」


藤村 「誰だよ」


吉川 「Cはセレモニーのセ」


藤村 「わかったから。ちょっと大人しくしてなさい」


吉川 「ね、ね、知ってた?」


藤村 「大人しくできないのか、お前は」


吉川 「できないねー! 大人なんかになるもんか!」


藤村 「30近いくせになに言ってんだ」


吉川 「すげーいいこと考えたんだけど、聞いてくれる?」


藤村 「あとで聞く」


吉川 「あとっていつだよ!」


藤村 「あとは、あとだよ」


吉川 「そんなこと言って、いっつも聞かないじゃんか。俺いっつも家まで持って帰っちゃって、せっかく思いついたいいことなのに、こっそり貯めておくしかないじゃん! どれだけ貯いいことがあると思ってんだよ!」


藤村 「わかった。わかったから。ちゃんとあとで聞くから」


吉川 「いーまー! 今じゃないと、もう全然面白くなくなっちゃう」


藤村 「今はダメだって! ちょっとは状況を考えろよ」


吉川 「考えませーん! なんぴとたりとも考えないね!」


藤村 「面倒くさい人だなぁ……。ほら、騒ぐからみんなこっち見てる!」


吉川 「見たい人には見せ付けてあげればいいじゃん」


藤村 「見せ付けるとかそういう問題じゃないだろ。周りの迷惑になっちゃうんだよ」


吉川 「見てる見てる。手振ってやろうぜ」


藤村 「やめなさいって。本当に落ち着きなさい」


吉川 「もう飽きた」


藤村 「飽きない!」


吉川 「帰っていい?」


藤村 「ダメだよ。ほら、もうすぐ出番だから」


吉川 「ねぇ、あの役つかれない?」


藤村 「今は自分のこと考えなさい。舞台に上がったらフォローできないんだから」


吉川 「だって、全然動けないんでしょ?」


藤村 「いいんだよ。やりがいのある仕事だって思ってるよ」


プレゼンター「それでは、本年度のマカダミー監督賞は……吉川監督です」


吉川 「ありがとう! ありがとう!」


藤村 「……」


吉川 「え~、この賞をいただけて、本当に嬉しいです。こんな立派な像までいただいて」


藤村 「……」


吉川 「ちょうど、今朝、家を出るときに妻が『新しい文鎮が欲しいの』と 、言ってたものでね。サンキュー! ありがとー! ありがとー!」


藤村 「……」



暗転

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