お題でつくる1

藤村 「やめとけよ」


吉川 「やめないよ」


藤村 「なんで、そこまでするんだよ」


吉川 「愛する家族のために、父として当然の行動だ」


藤村 「でも、そんな無理することないじゃん」


吉川 「無理じゃない。俺は可能を不可能にする男だ」


藤村 「全部台無しにしちゃうタイプってことか」


吉川 「間違った。余の辞書に不可能と言う文字は、ないこともない!」


藤村 「曖昧!」


吉川 「曖昧と言う言葉はある」


藤村 「そんなこと別に聞いてない」


吉川 「四頁にわたりカラーで掲載されている」


藤村 「使い勝手の悪い辞書だなぁ」


吉川 「俺はサンタとして家族の間で鮮烈のデビューを飾るんだ!」


藤村 「多分、家族は親父のデビューを望んではいないよ」


吉川 「オリコンに入るよ」


藤村 「最近あんまりオリコンの順位を気にしてる人もいないよ」


吉川 「この日のために、今朝はヒゲも剃ってない」


藤村 「ものすごい青々としちゃってる」


吉川 「サンタだからな」


藤村 「そんな青ひげのサンタはいない」


吉川 「うちの子は今ごろ俺の来日を楽しみにしてる」


藤村 「いや、お前は在日じゃないか。どこから来るつもりだ」


吉川 「子供の夢を壊したくないんだよぉ!」


藤村 「気持ちはわかるけど、たぶん、お前が行った方が夢は壊れる」


吉川 「そんなことない。めちゃくちゃデリケートに扱う。オシャレ着のように」


藤村 「デリケートさ必要だもんな」


吉川 「驚きの白さ!」


藤村 「確かに、真っ白にはなりそう……」


吉川 「とにかく、止めないでくれ!」


藤村 「止めるよ。危ないじゃないか」


吉川 「男の世界には危険がつきものだ」


藤村 「無駄に危険に足を突っ込むことはない」


吉川 「そういう宿命を受けて産まれた」


藤村 「受けてない。思い込みだ」


吉川 「男は外に出ると七人の侍がいる」


藤村 「侍かよ! すぐ殺されるじゃん」


吉川 「いや、いるだけ」


藤村 「いるだけなんだ。別に斬らないんだ」


吉川 「おでかけでござるか? とか聞いてくる」


藤村 「レレレのおじさんみたいな侍だな」


吉川 「息子は、俺のプレゼントを楽しみにしてるんだよ!」


藤村 「そんなの寝てる間に枕もとに、そっと置いておけばいいじゃん」


吉川 「それじゃ、夢がないじゃないか!」


藤村 「夢だけじゃ食っていけないぞ!」


吉川 「……藤村」


藤村 「……吉川」


吉川 「でも、とめてくれるな! 俺はこの靴下を! 息子に届けるんだ!」


藤村 「え?」


吉川 「くつした。結構のびるやつ」


藤村 「えー! プレゼントって靴下なの? 側じゃん! 外側じゃん!」


吉川 「だって中身は本物のサンタさんがくれるんじゃん?」


藤村 「信じてるのっ!?」


吉川 「いるもんっ♪」


藤村 「もん。じゃなくて。じゃ、わざわざサンタのふりする事ないじゃん」


吉川 「これは、モノマネオンパレードだよ」


藤村 「モノマネかよ」


吉川 「そして、後ろからご本人が登場するんだぜ?」


藤村 「しないよ!」


吉川 「とにかく、俺は行ってくる」


藤村 「でも、わざわざ。煙突から行くことないじゃん」


吉川 「こういうのは雰囲気作りが大切」


藤村 「でもおまえの家、風呂屋じゃん」


吉川 「やっぱ登っちゃだめかなぁ?」


藤村 「うん、鮮烈デビュー決めちゃうよ」


吉川 「オリコンか?」


藤村 「檻、だけだね」



暗転




この話はお題に基づいてつくりました。


お題

『煙突』

『くつした』

『クリーニング』

『あおひげ』


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