ぺてんし

餓鬼

吉川　「……え？」

餓鬼　「ペコペコだブー」

吉川　「いや、あの……餓鬼？」

餓鬼　「そうだブー」

吉川　「妖怪の、餓鬼？」

餓鬼　「いかにもだブー」

吉川　「えー！　だって……太ってる」

餓鬼　「ぷふぅ……。当たり前だブー」

吉川　「違うじゃん！　あれでしょ？　餓鬼って食べても食べても満たされない妖怪でしょ？」

餓鬼　「そうだブー」

吉川　「満たされてるじゃん！　完全な肥満体型じゃん」

餓鬼　「これは……着膨れだブー」

吉川　「嘘つけ。半裸じゃないか。腹でてるじゃないか」

餓鬼　「ヘソ出しルッキング」

吉川　「なんで現在進行形なんだ。見せたいのか」

餓鬼　「靴下の部分とか着膨れてるブー」

吉川　「そういう問題じゃない。もう全体的にデブ」

餓鬼　「うわぁ！　傷つくブー！　超傷つくブー！　間違ってハリネズミ食べた時くらい傷ついたブー」

吉川　「食べたの！？　生で！？」

餓鬼　「わさび醤油で」

吉川　「味付けとか聞いてない」

餓鬼　「栗と間違えたブー」

吉川　「間違えないよ！　あきらかに違うじゃん！　サイズとかキュートさとか」

餓鬼　「栗も慣れればキュートだブー」

吉川　「どう慣れるんだ。そもそも栗だってイガごと食べないだろ」

餓鬼　「砂糖醤油で」

吉川　「甘い系なんだ。しかも、一貫して全部醤油味」

餓鬼　「殻に栄養があるブー！」

吉川　「すごい無理やりな理論」

餓鬼　「いいんだブー。お腹の中で分解されるブー」

吉川　「ビフィズス菌もいい迷惑」

餓鬼　「人体の不思議ブー」

吉川　「妖怪じゃん。しかも、なんかデブで本当に妖怪かすら怪しい」

餓鬼　「違うブー！　胃下垂だから食べたらお腹出ちゃうブー！」

吉川　「そういう問題じゃない。全部タプタプだ。二重あごじゃないか！」

餓鬼　「ぶふぅ。馬鹿にしてブー！　妖怪馬鹿にすると怖いブー」

吉川　「ひっ……」

餓鬼　「食べるブー！」

吉川　「うわぁ」

餓鬼　「焼肉とか」

吉川　「え、俺じゃなくて？」

餓鬼　「そういうのは無理だブー」

吉川　「無理なんだ」

餓鬼　「人とか無理だブー」

吉川　「そうなんだ」

餓鬼　「いっぱい肉食うブー！　六人前はいけるブー！」

吉川　「そういうのは、どうぞ」

餓鬼　「……止て欲しいブー！」

吉川　「止めて欲しかったんだ」

餓鬼　「六人はさすがに苦しくなっちゃうブー。別腹のおやつが入らないブー！」

吉川　「別腹なら入るだろ！　やっぱただのデブじゃん」

餓鬼　「違うブー！　いろいろ不思議技とかあるブー」

吉川　「どんなの？」

餓鬼　「ぬ～り～か～べ～」

吉川　「餓鬼じゃん」

餓鬼　「今の似てたブー？　激似ブー？」

吉川　「真似かよ。それが技か」

餓鬼　「これ目がポイント。目に注目してもう一度いくブー。ぬ～り～……」

吉川　「もういいよ！　目とかどうでもいい」

餓鬼　「なんだブー。せっかく大技だしたのに」

吉川　「そんなのしかないんじゃん。このただのデブが」

餓鬼　「もう怒ったブー！　本気出すブー！」

吉川　「今度は一反木綿？」

餓鬼　「プッシュ～！」

吉川　「……っ！？　くさっ！」

餓鬼　「どうだブー！　匂い攻撃だブー」

吉川　「臭い臭い！　すごい精神的に追い詰められる技だ」

餓鬼　「主に、汗だブー！」

吉川　「普通の臭いデブじゃん！　悪臭防止法にひっかかってるデブじゃん！」

餓鬼　「うるさいブー！　あんまりいうと、本気でしょげるブー！」

吉川　「いや、脅しなのか何なのかわからない」

餓鬼　「しっかし……さすがに、自分でも臭いブー」

吉川　「臭いんだ」

餓鬼　「ここまでくると、なんか気分悪くなるブー」

吉川　「本当に臭いなぁ」

餓鬼　「うん。臭いブー」

吉川　「他人事じゃないよ！　お前だよ。なんかそんな諺あったな」

餓鬼　「言い伝えが？　やっぱり伝説の妖怪だブー！」

吉川　「臭いものはブタ」

暗転