ドイツ

良子 「天かける吉川くん!」


吉川 「かけてないよ! 人に勝手なかっこいい修飾をつけないでくれ」


良子 「かけていこうよ!」


吉川 「いこうよって言われても……どう考えても実現不可能だ」


良子 「これからはグローバルだよ!」


吉川 「突然、そんなこと言われても」


良子 「グロくいこうぜ! グロく!」


吉川 「グロくはならない。そういう略し方はしない」


良子 「グロマティー、グロマティー」


吉川 「もう、原型がなくなっちゃった。何が言いたいのかも伝わらない」


良子 「日本なんて狭い国で虫けらのように生きてる場合じゃないよ!」


吉川 「別に虫けらのように生きてない。大きなお世話」


良子 「天かける吉川くんのアンポンタン!」


吉川 「だから、かけてないし、なんで怒られてるの?」


良子 「もっと世界で覇権を競ってよ」


吉川 「いや、そんな壮大な場所には行きたくない」


良子 「どうせ吉川くんは日本語しかしゃべれないバーグ?」


吉川 「なんだ、その不自然な語尾は」


良子 「双子だけにソーセージなんつって」


吉川 「双子の話題いままで一ミリもなかったよね」


良子 「これからはね。ドイツだよ。鼻がムズムズるなぁ……デュッセルドルフ!」


吉川 「もうクシャミよりも寄せる方に必死になっちゃってるじゃん」


良子 「えへへ。思わずユーモラスな発言しちゃった」


吉川 「ユーモラスね。面白くはなかったけど気持ちは汲んでおく」


良子 「天かける吉川くんは優しいなぁ」


吉川 「いい加減、地面に下ろしてくれ」


良子 「好きバーグ!」


吉川 「ものすごい間違ったドイツ観をごり押ししてるな」


良子 「バァグ?」


吉川 「可愛く首傾げてもダメ。まぁ、確かにドイツ語とかできるといいとは思う」


良子 「ハンバー!」


吉川 「それは喜び表現か? ドイツ語のボキャブラリーが間違ってる上に少ない」


良子 「うるさいっ! 吉川くんのオタンチン!」


吉川 「また理不尽に怒られた」


良子 「いい加減な気持ちでドイツ語が覚えられると思ってのはどいつだ?」


吉川 「トラディショナルなダジャレが来た」


良子 「まぁまぁ、私たち二人の仲なんだから、遠慮はいらないよ」


吉川 「遠慮した覚えはないんだけど」


良子 「ほら、足を崩したまえ。ガッハッハ」


吉川 「どうした? 急にがさつなおっさんみたいに」


良子 「フランクな感じになってみた」


吉川 「フランク振ると?」



暗転

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