バナナで釘

藤村 「寒いなぁ」


吉川 「うん、寒いね」


藤村 「ほら、見て。息が……」


吉川 「本当だ。臭い」


藤村 「いや、臭さじゃない! 白いところを見て欲しかった」


吉川 「あー。そっちか」


藤村 「サラッと息が臭いとか言われるとショックだよね」


吉川 「ゴメンゴメン。あまりにも衝撃的だったもんで」


藤村 「そこまでかよ」


吉川 「ほら、草も木もしおれちゃって……」


藤村 「いや、それは寒いからでしょ? 俺の息のせいにしないでよ」


吉川 「なにかの新兵器かと思ったよ」


藤村 「そんな個人的に新兵器を開発しないよ」


吉川 「念のために軍とかにかけあってみれば?」


藤村 「念のためって意味がわからない!」


吉川 「あんまり声を荒げるなよ。俺の遺伝子とか傷つくだろ」


藤村 「だから新兵器じゃないって! 子供に害とかでないよ!」


吉川 「それにしてもすっかり冬だなぁ」


藤村 「うん。寒い」


吉川 「これだけ寒いとバナナで釘が打てそうだな」


藤村 「いや、打てないでしょ。それは多分、南極とかの話だよ」


吉川 「だって、これだけ寒いんだぜ?」


藤村 「これだけって、南極に比べたら……」


吉川 「あと、南極よりも臭いぜ?」


藤村 「匂いは関係ないし、その話題はもうよしてくれ」


吉川 「バナナで釘を打つ価値は十分あると思うけどなぁ」


藤村 「無理だって!」


吉川 「やってみなきゃわからないじゃん! ちょうどバナナも持ち合わせてるし」


藤村 「なんでっ!? なんでバナナ常備してるの?」


吉川 「おやつに含まれるから」


藤村 「いやいや、全然答えになってない」


吉川 「ほら! 心なしか固めだよ! いけるよ!」


藤村 「この固さは、単純にまだ熟れてないからじゃないか? 青っぽいし」


吉川 「いや、いけるね! さっそく釘を打とう」


藤村 「釘は?」


吉川 「釘なんて持ってるわけないじゃん。バカじゃないの?」


藤村 「いや、バナナ持ってたくせに……」


吉川 「だっておやつに含まれないじゃん」


藤村 「あぁ……。そうですか」


吉川 「畜生! 釘がないばかりに、こんなチャンスをミスミス逃すとは」


藤村 「そう、たいしたチャンスでもない」


吉川 「誰か釘をおやつにする人いないかなぁ?」


藤村 「そんなルンバみたいな人いない」


吉川 「もうテンションだだ下がりだよ」


藤村 「残念だったね」


吉川 「絶対、バナナで釘打てる気がしたのに!」


藤村 「打てないって!」


吉川 「打てたよ! さっきの俺のコンディションなら打てたね!」


藤村 「精神論持ち出してきた」


吉川 「なんか熱意が冷めたら、急激に寒く感じてきた」


藤村 「俺は最初から寒い」


吉川 「……寒いな」


藤村 「あぁ」


吉川 「あと、お前の息クサい」


藤村 「大きなお世話だ!」


吉川 「一応、釘さしておいた」



暗転



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る