ぺてんし

インタビュー

レポータ　「放送席！　放送席！　こちらは今日の試合を決めました、吉川選手に来てもらいました」

吉川　　　「ど、どうも」

レポータ　「吉川選手、お見事でした」

吉川　　　「ありがとうございます」

レポータ　「まさに奇跡を起こしましたね」

吉川　　　「は、はぁ」

レポータ　「打った球はどんな球でしたか？」

吉川　　　「内角高めのストレートだったと思います」

レポータ　「よく覚えてない？」

吉川　　　「いや、そういうわけでは」

レポータ　「目をつぶって打ったら偶然と言う感じですか？」

吉川　　　「ちゃんと見てましたけど」

レポータ　「すばらしい偶然でしたね」

吉川　　　「ぐ、偶然て……」

レポータ　「もう一生分の運を使いきっちゃったんじゃないですか？」

吉川　　　「運とかじゃなくて、けっこう頑張ったんですけど」

レポータ　「またまたご謙遜を」

吉川　　　「謙遜はしてないつもりですけど」

レポータ　「バットにはどんな小細工を？」

吉川　　　「いや、小細工とかしてないですよ」

レポータ　「賄賂？　賄賂なの？」

吉川　　　「ちょ、ちょっとあなた、失敬だな」

レポータ　「逃げるんですか？　やっぱりなにか後ろめたいことを？」

吉川　　　「してませんよ！　実力で打ちましたよ」

レポータ　「そう思いこみたい？」

吉川　　　「思い込みとかじゃなくて本当だから！」

レポータ　「バカ言っちゃいけませんよ」

吉川　　　「バカっ！？　いや、これヒーローインタビューでしょ？」

レポータ　「そうですけど……ヒーローって面じゃないですね」

吉川　　　「顔まで！　ちょっとあんた、なんなんだ！」

レポータ　「っていうか、本当に打ったんですか？　なんか夢とかじゃなくて？」

吉川　　　「打ったよ！　見てたでしょ？」

レポータ　「いやぁ、興味ない打席だったからお弁当食べてました」

吉川　　　「見てろよ！　ふざけんなよ！」

レポータ　「無理だなぁって雰囲気マンマンでしたもん」

吉川　　　「そういうの本人の前で言っちゃダメだよ！」

レポータ　「客もほとんど帰ってたし」

吉川　　　「なんてこった」

レポータ　「正直、いい迷惑ですよ」

吉川　　　「えー！　俺の一世一代の見せ場を……」

レポータ　「今後、このようなことのないように十分気をつけてください」

吉川　　　「なんで諭されてるの！？　大活躍したのに！」

レポータ　「自分の役割と言うのを把握してください」

吉川　　　「いや、活躍するよ！　プロなんだから活躍するって！」

レポータ　「空気読むこと覚えろ」

吉川　　　「なんなんだ！　バカにするのもいい加減にしろ！」

レポータ　「これからも鳴かず飛ばずでがんばってください」

吉川　　　「ちくしょう！　覚えてやがれ！」

レポータ　「以上、あざやかなサヨナラを決めた吉川選手でした」

暗転