選挙カー

選挙カー 「ありがとうございます。こちらは、藤村でございます」


吉川   「うるさいなぁ……」


選挙カー 「ありがとうございます。ご声援ありがとうございます」


吉川   「声援してないよ。うるさいからどっか行け」


選挙カー 「お手を振ってのご声援、ありがとうございます」


吉川   「手なんか振ってない。シッシってやったんだ。シッシて」


選挙カー 「現在、国はさまざまな問題を抱えております」


吉川   「まず、お前が騒音問題だ」


選挙カー 「いろいろな問題。例えば……えっと……」


吉川   「なんだよ。全然具体的に言えてないじゃん」


選挙カー 「2000年問題!」


吉川   「終わってる! はるか昔に終わってる!」


選挙カー 「じゃぁ、3000年問題!」


吉川   「先過ぎる! 見通しがつかないほど未来じゃないか。だいたい、じゃぁって何だ」


選挙カー 「間を取って2500年問題」


吉川   「間をとる意味がわからない。それにしても未来過ぎだ」


選挙カー 「ロボットたちが反乱を起こすかも知れません」


吉川   「なんだ、そのマンガチックな予言は」


選挙カー 「そのようなことのないように、藤村、粉骨砕身で望む所存であります」


吉川   「防ぐんだ。2500年のロボ革命を」


選挙カー 「そのためには、皆さんのお力添えをどうか一つ」


吉川   「そのためって……ロボ革命のために政治家になるのか」


選挙カー 「オラに元気をわけておくれ!」


吉川   「元気を募集しちゃってるんだ。票とかじゃなくて」


選挙カー 「最後のZ戦士として頑張りたいと思います」


吉川   「勝手にZ戦士を名乗ってる。だいたい2500年まで生きてないだろ」


選挙カー 「確かに、先行きの見えない現代でございます。少子化、ドーナツ化、ゾンビ化などさまざまな問題が山積みでございます」


吉川   「今、変なの入ってたよね? ゾンビ化はしないよね」


選挙カー 「この藤村、一命を賭して戦います」


吉川   「なにと!? ゾンビと?」


選挙カー 「ありがとうございます。くたばりぞこないの婆さん、ありがとうございます」


吉川   「急に毒蝮三太夫みたいになった」


選挙カー 「思えば、この藤村。政治家になるのを夢見て、はや二ヶ月」


吉川   「短い!」


選挙カー 「豪華な接待を受けていたというニュースに感銘を受け、自分の生きる道はこれだと!」


吉川   「TVの影響か……」


選挙カー 「アメリカの政治家ワシントンの言葉に、こんな言葉があります」


吉川   「色々なものに感化されてる」


選挙カー 「ごめん。桜折ったの、俺」


吉川   「それかよ! いや、有名だけど、名言じゃない」


選挙カー 「英語で言うと、I'm sorry」


吉川   「英語に言い直す意味がわからない」


選挙カー 「総理とソーリーを掛けた見事なダジャレでございます」


吉川   「違うだろ。アメリカは大統領じゃん」


選挙カー 「その言葉を聞いたとき、私の胸に熱いものがこみ上げました」


吉川   「なんでだ」


選挙カー 「コラー! 桜を折ったのはお前かー!」


吉川   「熱い怒りじゃん。自分の桜でもないのに」


選挙カー 「この熱い気持ちをぶつけたい! やたらめったらぶつけたい!」


吉川   「やたらめったらやっちゃダメだよ。迷惑だよ」


選挙カー 「当選の暁には、ダルマに目を入れることを約束します!」


吉川   「それは別に約束しなくていいから、個人的にどうぞ」


選挙カー 「この藤村、最後の思い出作りにどうかご協力を」


吉川   「思い出作りなんだ…………」



暗転

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