刺客

刺客 「よく来たな」


吉川 「え……」


刺客 「ここまで来た勇気だだけでも評価してやろう」


吉川 「いや、あの……」


刺客 「だが、この俺を倒さぬ限り上の階には進ません」


吉川 「え~と……すみません」


刺客 「命乞いか?」


吉川 「ここ、私の家なんですけど……」


刺客 「それがどうしたっ!」


吉川 「どうしたって……なんでうちのマンションに謎のマスクマンが……」


刺客 「上の階にすすむには、この俺を倒すしかないぞ」


吉川 「いったい何なんですか? 警察呼びますよ?」


刺客 「フフフ……警察だと?」


吉川 「……なんですか!」


刺客 「それはちょっと困る」


吉川 「困るんだ。意外と弱気」


刺客 「警察なんか呼んでどうなっても知らないぞ!」


吉川 「なっ……!? なんだと!?」


刺客 「フフフ……この俺がどうなっても知らないぞ」


吉川 「お前がかよ。そんなの本当に知らないよ」


刺客 「やむを得ない。最後の手段だと思っていたが……」


吉川 「何をする気だ!」


刺客 「お願いするぞ!」


吉川 「え……」


刺客 「深くお願いしちゃうぞ! 土下座とかして」


吉川 「いや、お願いされても……」


刺客 「どうかひとつ!」


吉川 「なんなんだ。いったい何が目的なんだ」


刺客 「俺を倒したら階段を使うことを許そう」


吉川 「だからなんで?」


刺客 「大丈夫。こう見えても身体は弱い」


吉川 「なにが大丈夫なんだ」


刺客 「手加減するから!」


吉川 「なんだ、手加減て。なんでそこまでして戦わなきゃいけないんだ」


刺客 「どうしても嫌だと言うのか。よろしい。ではこれを見ろ!」


吉川 「そ、それは……!」


刺客 「エレベーター故障のお知らせ!」


吉川 「故障してるんだ」


刺客 「明日、業者さんが来てくれる」


吉川 「わかりました」


刺客 「申し訳ない」


吉川 「というか、あなたは……」


刺客 「フフフ……ついに正体を明かす時が来たようだな」


吉川 「いや……なんかもう、いいです」


刺客 「俺はこの塔の第一の刺客。人呼んで管理人だ!」


吉川 「ふぅ~ん」


刺客 「おかえりなさい」


吉川 「……ただいま」



暗転

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