独立宣言

吉川 「なぁ、沈黙の艦隊ってマンガ読んだ?」


藤村 「あぁ、読みましたよ」


吉川 「かっこいいよなぁ」


藤村 「艦長、岩礁です。右に避けましょう」


吉川 「俺もしようかなぁ……。独立宣言」


藤村 「なに言ってんですか、艦長!」


吉川 「だってしたいじゃん? 独立」


藤村 「あれは原子力潜水艦の話じゃないですか」


吉川 「まぁスケールは違うけどその辺は心意気でカバーできる範囲じゃん?」


藤村 「できないですよ。心意気で原潜になれたら、どこでも大国ですよ」


吉川 「世界と渡り合いたい!」


藤村 「バカ言わないで下さい! だって我々は二人乗りカヌーじゃないですか!」


吉川 「あ、岩だ。左に避けるぞ」


藤村 「イエッサ艦長」


吉川 「なぁ……、しようぜ? 独立」


藤村 「しようぜって言われても、そんなに簡単にしちゃダメでしょ」


吉川 「平気だよ。よし、今日から我々は独立国家だ」


藤村 「わぁ。身勝手な独立宣言だ」


吉川 「これから俺は国家元首になるから艦長はおかしいな」


藤村 「カヌーのくせに無理やり艦長と呼ばせる時点で随分おかしかった」


吉川 「これからは酋長と呼べ」


藤村 「え……、そんな国なの?」


吉川 「お前は副酋長」


藤村 「うれしくない! いやだ。国民でいい!」


吉川 「欲のないやつよ」


藤村 「その欲望が理解できない」


吉川 「独立したからには国の名前を決めなきゃな」


藤村 「そういうのって自分でつけていいんですか?」


吉川 「いいんだよ。俺の国なんだから。じゃぁ吉川と藤村の名前を一文字ずつとって……」


藤村 「すごいダサい名前になりそうな予感……」


吉川 「メガネ共和国ってのにしよう」


藤村 「なんでっ!? そんな文字一つも入ってないよ!」


吉川 「外人にも発音しやすい名前。メガーネェ!」


藤村 「二人ともメガネしてないのに……」


吉川 「よくよく考えたら、もう日本人じゃないから日本語もやめよう」


藤村 「そんな、突然止められても困る」


吉川 「ウボボボウボボウボボボ?」


藤村 「いや、待ってよ! そんな突然しゃべられてもわからないよ。共通認識じゃないじゃん!」


吉川 「今のはゴン太くんのモノマネ」


藤村 「なんでだよ! なんで脈絡なくゴン太くんなんだ」


吉川 「突然言葉を考えるのは難しいから語尾に特徴をつけよう」


藤村 「すごい気色悪いことになりそう。~ナリ。とか言うんだ」


吉川 「言わない(爆)」


藤村 「じゃぁ、~メガネ。とか言うんだ」


吉川 「そんなベタベタな(爆)」


藤村 「待て待て待て。それはなんですか?」


吉川 「なにが(爆)?」


藤村 「(爆)ってついてる! これ以上なく不自然な感じで」


吉川 「我が国民はみんなつけることになった(爆)」


藤村 「いやだ。絶対つけない」


吉川 「実は俺もそろそろ恥かしくなってきた(爆)」


藤村 「やめればいいじゃないですか。融通効かない人だな」


吉川 「だいたい(爆)は危ない。原子力なのに」


藤村 「積んでないじゃん! カヌーなのに」


吉川 「実は、原子力カヌー」


藤村 「嘘つけ。そんな無防備な危険に晒されたカヌーがあるか」


吉川 「俺が原子力」


藤村 「意味がわからない。なにをおっしゃってますか?」


吉川 「俺の身体の中には原子力が組み込まれている」


藤村 「まだ言い張るか」


吉川 「こう見えても四馬力」


藤村 「意外と少ない」


吉川 「原子力エネルギーで動くペースメーカー」


藤村 「身体悪いんじゃん。しかも原子力の必要性が感じられない」


吉川 「鉄腕メガ~ネ~♪」


藤村 「いや、だからメガネじゃないじゃん」


吉川 「酋長のドキドキメルトダウンの巻」


藤村 「いや、それはドキドキのレベルじゃない。巻とかいってる場合じゃない」


吉川 「メガネ共和国始まって以来の危機!」


藤村 「もう始めなくていいよ」


吉川 「すわっ! 反乱か!」


藤村 「一人で勝手に独立してくださいよ」


吉川 「そんなこと言って、お前は酋長の座が目的だな」


藤村 「心底いらない。頼まれてもお断りだ」


吉川 「反乱や! お前は国家転覆を企んでる!」


藤村 「その前に氾濫で転覆するんじゃ……」



暗転

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