爆弾魔

爆弾魔 「……聞こえるか? この建物に爆弾を仕掛けた」


吉川  「じゃ、逃げます」


爆弾魔 「待ってよ! 爆発しちゃうよ?」


吉川  「だから逃げます」


爆弾魔 「ものわかり良すぎだよ。残された人はどうなるの?」


吉川  「爆発するんでしょ?」


爆弾魔 「そうだよ。え? ほったらかし? 爆発しっぱなし?」


吉川  「そのあと燃えるんじゃないかなぁ」


爆弾魔 「そういう経過報告じゃなくてさ、爆弾処理班の人ですよね?」


吉川  「まぁバイトみたいなもんですが」


爆弾魔 「バイトなの!? え、そんな人なの?」


吉川  「バイトっていうか。……学生気分?」


爆弾魔 「いや、ちゃんとしようよ。大人なんだからさ」


吉川  「やれって言われればやりますけどねー」


爆弾魔 「正義感が驚くほど感じられない人だな」


吉川  「正直な話、爆発に巻き込まれるのとかあんまり好きじゃないんですよ」


爆弾魔 「いや、みんなそうだよ。だから仕掛けたんだよ」


吉川  「まぁ、食わず嫌い的なものもありますけどね」


爆弾魔 「大概の人は未経験だよ。爆発されず嫌いだよ」


吉川  「初めは痛いとかいいますからねー」


爆弾魔 「初めとかの問題じゃなくて、いつでも新鮮に痛いと思うよ」


吉川  「でも、クラスの子はほとんど経験済みって言うし」


爆弾魔 「え? 何の話? 赤裸々な初体験のコーナー?」


吉川  「爆弾処理ですよ。なにをこんな時に。エロス!」


爆弾魔 「ご、ごめん。そんなつもりじゃなかったんだけど……」


吉川  「で、どこに仕掛けたんですか?」


爆弾魔 「フフフ。仕掛けた場所をしめす三つのヒントを用意した。こちらの要求を一つのむごとにヒントを与える」


吉川  「ヒントじゃなくてズバリ答えを教えてください」


爆弾魔 「それじゃ盛り上がらないじゃん! ハラハラドキドキしないじゃん」


吉川  「あとでします」


爆弾魔 「いや、後でされても困るよ。そんな個人的にハラハラドキドキされても嬉しくない」


吉川  「ミニロトでします」


爆弾魔 「勝手にやってよ。そうじゃなくてさ、ヒントからさがすっていうドキドキ感がいいんじゃない?」


吉川  「じゃ、ミニロトやりながら探しますから」


爆弾魔 「いやいや、そういう場合じゃないじゃん? なんでそこまで余裕たっぷりなの?」


吉川  「じゃ早くヒント下さい、生年月日とか」


爆弾魔 「ミニロトのヒントじゃん! そんなの勝手に考えてよ」


吉川  「こういうのは意外と他人から聞いた数字を適当にとかの方が当たるんですよ」


爆弾魔 「そうじゃなくて。ミニロトはちょっと置いておこう」


吉川  「わかりました。はい、一つ目のヒントをお願いします」


爆弾魔 「えー! 今のは要求じゃなくて……」


吉川  「じゃ、ミニロトやりますよ? いいんですか?」


爆弾魔 「いや。わ、わかった。全然釈然としないけど」


吉川  「早く言わないと下四桁を書き込むぞ!」


爆弾魔 「すごまれても困る。じゃ、一つ目のヒント。三つの太陽が合わさる時……」


吉川  「あった」


爆弾魔 「えー! まだ一つ目もちゃんと言えてないのに」


吉川  「とりあえず開けてみまーす」


爆弾魔 「危ないよ! リラックスしすぎだよ」


吉川  「三本のコードが見えるんだけど……」


爆弾魔 「フフフ。その三つのコードのうちダミーが……」


吉川  「とりあえず赤切ったけど何もならないなぁ」


爆弾魔 「バカ! 早すぎだよ! ちょっと先走りすぎ。もっと落ちついて」


吉川  「つぎ、青いきまーす」


爆弾魔 「待って! いかないで! ちょっと話を聞きなさい」


吉川  「じゃ、白」


爆弾魔 「あの……勘弁してよ。もっとさ、あるじゃん? 残り1秒でギリギリで、みたいな」


吉川  「えー。まだ1時間以上もあるじゃん」


爆弾魔 「だから早く見つけすぎなんだよ! こっちはいろいろ考えてたのに!」


吉川  「じゃ、とりあえず昼飯くってきていい?」


爆弾魔 「ダメだよ! なんで休憩はさむの? どういう状況だかわかってる?」


吉川  「おなかすいてる」


爆弾魔 「お前の状況じゃないよ! だいたいおなかすくなよ! こんな時に」


吉川  「じゃぁ何か買ってきてよ。おにぎりとか」


爆弾魔 「なんで俺がパシるの?」


吉川  「具はねぇ、米か海苔」


爆弾魔 「それは具じゃない! 外殻じゃないか!」


吉川  「じゃ、もう白切っていい?」


爆弾魔 「ま、まだ白かどうかわからないじゃん!」


吉川  「大丈夫だった」


爆弾魔 「切ったの? もう切っちゃったの?」


吉川  「止まった」


爆弾魔 「まじかよ。なんだよ、俺一人しかハラハラドキドキしてないじゃん」


吉川  「そりゃ、ドキドキしたよな。現場にいるんだもん」


爆弾魔 「なっ!? いないよ! 全然いないよ」


吉川  「キャッチ!」


爆弾魔 「しまった! 捕まった」


吉川  「&リリース」


爆弾魔 「ええー! 放された。戸惑うくらい自由の身になった」


吉川  「お前が現場にいることくらい初めからわかっていた」


爆弾魔 「そんな……なんでばれたんだ?」


吉川  「不自然なくらい携帯で豊かなリアクションしてたから」


爆弾魔 「ち、ちくしょう!」


吉川  「逃げ切れると思ってるのか?」


爆弾魔 「あ~ばよ~」


吉川  「捕まえた」


爆弾魔 「くそぅ」


吉川  「お前、足遅いなぁ」


爆弾魔 「膝に……爆弾抱えてるんです」



暗転

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