悪魔の囁き

吉川 「ちっくしょう! あんなやつ……」


悪魔 「ほわんほわんほわんほわんほわわわわ~ん♪」


吉川 「え……」


悪魔 「ヒッヒッヒ。殺っちまえよ」


吉川 「誰だお前は」


悪魔 「誰だとはずいぶんだな。俺はお前の心の中に潜む悪魔」


吉川 「なんだって!?」


悪魔 「あくまでも悪魔」


吉川 「……」


悪魔 「もう一度言うぞ。あくまでも悪魔」


吉川 「は、ははは……。面白いですね」


悪魔 「俺はお前の心の弱い部分につけこむのさ」


吉川 「しまった。さっそくつけこまれてしまった」


悪魔 「その調子であいつもやっちゃえよ」


吉川 「いや、でも。いくらなんでもさぁ」


悪魔 「じゃ、俺がいいものをやろう。見たことあるかピス……」


吉川 「ピストル!?」


悪魔 「ピスタチオだ」


吉川 「ピス……タチオですねぇ」


悪魔 「いいものだろ?」


吉川 「まぁ好きですけど」


悪魔 「どうだ」


吉川 「なにを勝ち誇った顔しちゃってるんだ。それをどうしろと」


悪魔 「ぶつけてやれよ」


吉川 「え……」


悪魔 「力いっぱいぶつけてやれ! で、殺せ!」


吉川 「いや、無理だよ。そんなの戦闘力130くらいないと無理だよ! 亀仙人クラスだよ」


悪魔 「修行しろ」


吉川 「気の長い話だなぁ。もっと実用的なものくれよ」


悪魔 「ではこんなのはどうだ?」


吉川 「それは、ピ……」


悪魔 「そう。ピーナッツだ」


吉川 「また豆かよ。なんで豆ばっかりなんだ」


悪魔 「お好みパックに入ってたから」


吉川 「そんなのか。そんなものくれる気だったのか」


悪魔 「あとグリーン豆もあるぞ」


吉川 「いらないよ!」


悪魔 「存分にぶつけてやれ!」


吉川 「鬼じゃないんだから。豆でどうやって殺すんだ」


悪魔 「毒を塗って食わせてやれ」


吉川 「じゃ、その毒をくれよ」


悪魔 「そういうのはない」


吉川 「ないのか」


悪魔 「お好みパックに入ってなかった」


吉川 「なんだよ。全部お好みパック頼みか」


悪魔 「あとチョコボール買ってきた。ピーナッツの方」


吉川 「豆好きだなぁ」


悪魔 「マメに生きられますように」


吉川 「おばあちゃんみたいなこと言い始めた」


悪魔 「うっわ! すっげぇ!」


吉川 「どうしたんだ、一体」


悪魔 「金のエンゼルが当たった!」


吉川 「悪魔がエンゼルで喜んじゃまずいだろ」


悪魔 「おもちゃの缶詰もらえるんだぜ!」


吉川 「いや、そうだけど。無邪気だなぁ」


悪魔 「バカ! すごい邪気だよ! 悪魔馬鹿にするなよ!」


吉川 「気に触ったのか。意外とプライドが高い」


悪魔 「ヘンッ! こんなエンゼルいらねーぜ」


吉川 「急に強がり始めた。さっきまであんなに驚いて喜んでたのに」


悪魔 「驚いてねーよ! 超冷静だった」


吉川 「豆鉄砲食らったような顔してたよ」



暗転

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