王様

大臣 「王様。お話があります」


王様 「……」


大臣 「王様ッ! 裸の王様ッ!!」


王様 「なんじゃ。裸の大臣」


大臣 「そのことでお話が……」


王様 「なに?」


大臣 「もうそろそろ、やめにしません? 裸」


王様 「えー! だってまだ始めたばっかりじゃん。そんなにすぐやめたら国民から総スカンだよ」


大臣 「現時点でほぼ100%のスカンですよ」


王様 「まじで? 裸の国民が?」


大臣 「だいたいなんですか。裸法って。なに勝手な法律つくっちゃって」


王様 「だってしょうがないじゃん。暑かったんだもん」


大臣 「暑かったら一人で裸になってればいいでしょ!」


王様 「そんなの恥かしいじゃん。子供から裸だって指さされちゃうよ」


大臣 「実際に裸なんでしょ。そんなわがままのために国民を犠牲にしないで下さい」


王様 「夏なんだしさー。いいじゃん? 観光客増えたし」


大臣 「その裸の観光客のせいで治安は乱れまくってますよ」


王様 「バカだなー。その治安の乱れも見越しての法律だぞ」


大臣 「どこを見越してるんですか」


王様 「ほら、裸だと銃とか凶器とか隠せないじゃん」


大臣 「まぁ、そうですけど。なんかもっともらしいけども」


王様 「あと衣料費がかからないから地球にも優しいじゃん」


大臣 「でも根本的に問題がありすぎでしょ」


王様 「なんで?」


大臣 「なんでって……おかしいじゃん。裸なんて」


王様 「そりゃ一人だけ裸だとおかしいよ。でもみんな裸なんだからいいじゃん」


大臣 「よくないでしょ」


王様 「世間体というのは民意だぞ? 全員が追従すればそれが民意となる」


大臣 「もっともらしいことを……裸のくせに」


王様 「天動説の時代に地動説を唱えれば弾圧されるが、いまやすっかり地動説の時代だ」


大臣 「でもほら、他国との兼ね合いもあるじゃないですか!」


王様 「裸を文化ととらえればいい。異文化は個性、そのうち他の国も裸になるかも知れない」


大臣 「でも衣食住というじゃないですか」


王様 「完璧な住環境というのは衣も食も内包されるものだ。温かい部屋なら服も要らない」


大臣 「もうね。理屈じゃないの! やなの! 裸は嫌だー!」


王様 「大臣のくせに駄々こねて、まぁ確かに先進的すぎたかもしれない」


大臣 「でしょ!」


王様 「これから寒くなってくるし、服着てもいいかもなー」


大臣 「わりかしあっさりとくつがえった」


王様 「でも一つ重大な問題があってね」


大臣 「なんです重大な問題とは?」


王様 「この問題だけはどうしようもないんだよ。手も足も出ない」


大臣 「そんなことないです。この国の頭脳を集めて解決しましょう」


王様 「そう言う問題じゃない。頭は大丈夫なんだよ。でも手も足も出ないんだ」


大臣 「簡単に諦めない下さい。一体何が問題なんですか?」


王様 「ほら、この服、きつすぎて手も足も出ない」


大臣 「太っただけじゃん!」



暗転



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