侵略

宇宙人 「なんかね。もう全然余裕なんすよ」


吉川  「余裕って言われてもなー」


宇宙人 「だから担当の人呼んでもらえません?」


吉川  「担当の人って言われても……」


宇宙人 「いるでしょ。侵略担当の人。腕に黒いカバーしてる」


吉川  「そんな人聞いたことない」


宇宙人 「じゃ大統領とかでいいや。上の人だして」


吉川  「いや、個人じゃちょっと呼べないよ」


宇宙人 「電話すりゃいいじゃん。ちょっと侵略の人がきてますけど、って」


吉川  「そんなカジュアルに呼べないって!」


宇宙人 「え? ひょっとして電話ってまだない? その程度の星?」


吉川  「いや、電話くらいありますよ! ちゃんと携帯」


宇宙人 「それってメール送れる?」


吉川  「できますよ」


宇宙人 「へぇ、便箋と封筒もついてるんだ」


吉川  「そんなものはついてない」


宇宙人 「なんだ。ハガキか」


吉川  「ハガキでもない。Eメール」


宇宙人 「あ、あぁ……。アレね。遅れてるね」


吉川  「ウソだ。明らかに動揺してるじゃん。知らないんでしょ?」


宇宙人 「いや、知ってるって。あれでしょ? 良いやつでしょ?」


吉川  「いや、Eってそういう意味じゃないから。価値じゃないから」


宇宙人 「あー。はいはい。そっちね」


吉川  「どっちだと思ってたんだ」


宇宙人 「私の星じゃね、そんなの100年前。おじいちゃんの時代」


吉川  「嘘っぽいなぁ……。そっちの星は携帯電話とかあるんですか?」


宇宙人 「当たり前じゃん! 携帯パパイヤだってあるよ」


吉川  「いや、それはただ単にパパイヤを持ち歩いてるだけじゃん」


宇宙人 「なにかと便利じゃない? パパイヤ食べたくなった時とか」


吉川  「なにかとって、パパイヤ食べたい時限定じゃないか」


宇宙人 「ほら、パパイヤは頻繁に食べたくなるもんね」


吉川  「もんねって、同意を求められても……」


宇宙人 「あと携帯カバンもあるぜ」


吉川  「いや、それは普通だ。携帯できないカバンはカバンじゃないだろ」


宇宙人 「うわぁ! 遅れてるぅ。うちの星じゃ据え置き型カバンだってあるよ! 大容量」


吉川  「それはカバンじゃない」


宇宙人 「百人乗っても大丈夫!」


吉川  「物置じゃないか」


宇宙人 「101人乗ったら大爆発!」


吉川  「どういう構造だ。なんで爆発する必要があるんだ」


宇宙人 「防犯上の理由ね。101人強盗が来た時とか、なにかと便利」


吉川  「来ないよ。101人も。なんだよなにかとって、何の役にも立ってない」


宇宙人 「まぁ、今話し聞いててわかっただろうけど、うちの星の科学力ならこの程度の星は余裕なんよ」


吉川  「えー。そうなの? そんな話だったっけ?」


宇宙人 「どうせそっちの武器とかたいしたことないんでしょ? 石とか」


吉川  「失礼だな。もっとすごいよ。ミサイルとか原子爆弾とか」


宇宙人 「え……。あぁ、その程度か。笑っちゃうなー。ははは」


吉川  「ポーカーフェイスの下手な宇宙人だなぁ」


宇宙人 「まぁそのくらいの武器なら簡単に防ぐね。片手で」


吉川  「えぇー! 素手なの? 腕細いのに……」


宇宙人 「実は今も最強の武器を持ってきてる。だから降伏してください」


吉川  「やだよ。なんか別に負けなそうだし」


宇宙人 「いいの? 出しちゃうよ? ポロリとだしちゃうよ?」


吉川  「いや、そんな出され方してもリアクションしづらい」


宇宙人 「じゃ見せるよ。最大の武器。……ポロリ」


吉川  「うわぁ」


宇宙人 「ポロリ……ポロリ……」


吉川  「どどどどうしたんですか!? 急に泣き出して」


宇宙人 「涙は女の最大の武器よ」


吉川  「帰れ」



暗転

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