ちょい足しグルメ

藤村 「ここでちょい足しグルメをします」


吉川 「でた! 一癖あるアレンジメニュー」


藤村 「今回はこれを足します。なんと……塩!」


吉川 「待って。塩って、ただの塩?」


藤村 「塩化ナトリウム」


吉川 「それはちょい足しグルメじゃないね。味付けが薄くて満足できない人だね」


藤村 「意外なことにこれが食材を邪魔しない」


吉川 「塩だからね。そりゃ邪魔しないよ。しょっぱくはなるけど」


藤村 「騙されたと思って食べてみて」


吉川 「あ、しょっぱい! しょっぱくなったよ」


藤村 「だいたいみんなそう言います。ただここからがちょい足しグルメの本領発揮」


吉川 「あ、あるんだ? ちゃんとしたちょい足しが」


藤村 「お湯を足します」


吉川 「やっぱりしょっぱかったんじゃん! 薄めるなら最初から塩を足すなよ」


藤村 「全体的に量が多くなった」


吉川 「微妙な貧乏アレンジやめてくれない?」


藤村 「ただ、ここになんと驚きのちょい足しが」


吉川 「足すの? どんどん量が増えていかない?」


藤村 「なんとここでカレー粉をちょい足し」


吉川 「カレーになるね。カレー粉を足したらもうそれはどんな味でもカレーになるね」


藤村 「ほんのちょっとだけ。小さじ50杯分」


吉川 「だいぶ入れたな。そんなに入れるなら小さじで換算しないでくれる?」 


藤村 「さて、どんな味の変化があるか」


吉川 「全部カレーの味になってるな。カレー強いもん。全部に打ち勝ってる。これはただのカレー」


藤村 「さらにここで愛情をちょい足し」


吉川 「急に概念になるな。最初塩を入れてたのに、ここで概念を入れても変わらないでしょ」


藤村 「ひとつまみの憎しみも」


吉川 「ドラマチックにしないでよ。人のお皿でドラマを彩らないでよ」


藤村 「さらにここでピザを4枚ちょい足し」


吉川 「お前のちょいの尺度どうなってるの? それはもうピザ4枚だよ。ピザ4枚とカレーだよ」


藤村 「さらに友情をちょい足し」


吉川 「合間合間に概念挟むのなんなの? もう友情足されてもピザ4枚とカレーだよ」


藤村 「このままでは美味しくないので」


吉川 「自覚あったのかよ。驚いたよ。美味しくなる方向にだけ進んでくれよ。なんで一度マイナス方面に舵を切ったんだよ」


藤村 「これをほんのちょっと足せば、もう天国に届く味に!」


吉川 「天国とか大げさなことじゃなくていいのよ。ちょい足しの範疇にそこまで求めてないから。意外と美味いなーくらいのレベルが話題にしやすいのよ」


藤村 「ふぐの内臓をちょい足し」


吉川 「天国届く味になったわ」



暗転

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る