子供

博士 「大変だ! 吉川君!」


吉川 「どうしたんですか、血相をかえて」


博士 「君の子供たちが一大事なんじゃ!」


吉川 「やだなぁ博士、僕には子供なんていませんよ」


博士 「隠し子発覚じゃ!」


吉川 「発覚じゃない。そんなもの作った覚えはないですよ」


博士 「実は、今月遅れてるの……」


吉川 「何がだ! 何が遅れてるんだ」


博士 「政府の対応が」


吉川 「急に政治批判!」


博士 「う、産まれるー!」


吉川 「勝手に産めよ! そんなの知らん」


博士 「浜辺に! 浜辺に穴を掘って!」


吉川 「なにを産卵しようとしてるんだ。気持ち悪い」


博士 「認知して! この子に罪はないの!」


吉川 「しないよ! というか産まないだろ。なにも」


博士 「男の子なら貴方の名前から一文字とって鬼軍曹って名前にしようと思うの」


吉川 「どこの文字を取ったんだ。だいたいそんな名前つけちゃだめだろ」


博士 「女の子なら465号」


吉川 「なんで番号なんだ。愛情もってやれよ。マシーンか」


博士 「野球チームが作れるくらい沢山産むんだ!」


吉川 「ほのぼのしはじめた」


博士 「金を」


吉川 「全然ほのぼのしてない! 金を産むのか。球団買収か!」


博士 「というわけで君の子供が大変なんじゃ!」


吉川 「どういうわけだったのかまったくわからない。だから子供なんていませんて」


博士 「未来の話じゃよ」


吉川 「え……」


博士 「夏休みの工作でタイムマシーンを作ったんじゃ」


吉川 「えらくライト感覚で作っちゃうんだな」


博士 「牛乳パックとサランラップの芯をつかった」


吉川 「材料もともかく原理がまったくわからない」


博士 「牛乳パックが時速88マイルを超えると自動的にタイムスリップする」


吉川 「動力は何だ。時速88マイルの動力はいったいなんなんだ」


博士 「ちなみに車輪はサランラップの芯でーす!」


吉川 「そんなの聞いてない。確かに心もとない車輪だけど!」


博士 「それで未来に行ってきたんじゃが、君の子供たちが……」


吉川 「私の子供がどうしたんです!?」


博士 「うふ♪ 内緒」


吉川 「バカか! おまえはなんだ! とんちんかんか! 早く言えバカ!」


博士 「だって、恥かしくて言えない」


吉川 「何が恥かしかったんだ! さっきまで聞いてもいないのに言う気マンマンだったじゃないか」


博士 「大人になって羞恥心に目覚めた」


吉川 「そんな短時間に大層な変貌を遂げるなよ! 言えー!」


博士 「ど~しよっかなぁ~」


吉川 「何勿体つけてんだ! お前言わないとこの工作燃やすぞ!」


博士 「ダメ! そのタイムマシーンは火には弱いの!」


吉川 「そんな脆弱なボディーでよく未来に行ってきたな」


博士 「頑張り屋さんでしょ?」


吉川 「頑張ってできる限界があるだろ。で、未来の俺の家族はどうなってるんだ!?」


博士 「実はな、吉川くんの子供たちが……」


吉川 「……うん」


博士 「わしになついちゃってなついちゃって。おじいちゃんなんて呼ばれちゃって」


吉川 「お前、なに人の未来の家庭にすんなり入り込んでんだ!」


博士 「それで吉川くんの娘が、大きくなったらわしと結婚するーなんて言い出しちゃって」


吉川 「ふざけんな、ボケじじい」


博士 「未来の吉川くんも同じこと言うんだもんなー。だから戻ってきて許可を貰おうと……」


吉川 「許可なんかするか。人の娘をたぶらかせやがって! 過去の人間のくせに」


博士 「どうせワシは過去の人間さ……」


吉川 「そういう意味じゃないだろ! なにいじけてるんだ」


博士 「やっぱり未来には介入しちゃいけないよな」


吉川 「できれば現在にも介入して欲しくない」


博士 「あぁ、結婚は無理だったか。464号ちゃん」


吉川 「手遅れだったか……」



暗転



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