いい人マン

吉川  「助けてー!」


いい人 「頼まれたら嫌とは言えない。いい人マン参上!」


吉川  「わぁ。いい人そう」


いい人 「趣味は日曜大工です」


吉川  「いい人っぽい!」


いい人 「晴れた日はもっぱら洗車ですね」


吉川  「いい人……ぽいのかなぁ」


いい人 「まぁまぁ、立ち話もなんですからおかけになって」


吉川  「あ、どうもすみません。いい人だ」


いい人 「あ、その椅子汚れてますね。私の上着を敷いて座ってください」


吉川  「ええっ!? そんな。なんていい人なんだ」


いい人 「ところで何かお困りですか? お話を伺うくらいしかできませんが」


吉川  「いや、それほどでもないんですが……」


いい人 「知り合いに腕のいい弁護士がいるので紹介いたしましょうか?」


吉川  「いや、いい人だけど他人任せなのか。本人は何かしてくれないの?」


いい人 「あ、肩にほこりが」


吉川  「なんかいいことのスケールが小さくなってきた」


いい人 「喉かわきません? 何か買ってきましょうか?」


吉川  「いや、大丈夫です。お気使いなく」


いい人 「退屈でしたら手品でも、最近覚えたばっかりなんですが」


吉川  「いい人なのかどうかわからなくなってきた」


いい人 「ここにハンカチがあるんですが……あ! 隠してたコインが落ちちゃいました。はは」


吉川  「いい人そう! 純朴さがいい人そう!」


いい人 「ところでどのようなお困りで?」


吉川  「いや、いいんです。あなたを見ていたら私の抱えてる問題なんて些細な気がしてきました」


いい人 「そんなこといわずに話してください!」


吉川  「あなたみたいな心の綺麗な人に出会えてよかったですよ。自分でなんとかしてみます」


いい人 「そうですか。どうやら、また失敗してしまったみたい。ははは」


吉川  「失敗なんかじゃないですよ! あなたのおかげです」


いい人 「私なんて結局何の役にも立たないんですよね。はは……」


吉川  「そんな!」


いい人 「どうせ、いなくてもいい人なんだ」


吉川  「めんどくせぇ!」



暗転

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