トイレの

吉川 「はぁ~、漏れる漏れる」


花子 「一緒に遊ぼ……」


吉川 「ふぅ~、漏れるところだった」


花子 「あの……一緒に……」


吉川 「うわぁ!」


花子 「えへへ」


吉川 「ちょっとこぼしちゃった」


花子 「ちょっとこぼさないで! しかも不自然な独り言で実況しないでよ!」


吉川 「え、誰?」


花子 「誰って、花子ですけど」


吉川 「ここ男子用ですよ?」


花子 「う、うん。でも違うの」


吉川 「え、そういうサービス?」


花子 「どういうサービスよ! いったい何を期待してるの」


吉川 「じゃ何? 清掃中?」


花子 「違くて! えー? ピンとこない?」


吉川 「こない」


花子 「きてよ! ピンときてよ! トイレで私の名は花子」


吉川 「あ~、チェンジ」


花子 「なにチェンジって! 失礼な!」


吉川 「チェンジなしか。初めてだからシステムがわからなくて」


花子 「だからそういうのじゃないって! トイレの花子さん! 知らない?」


吉川 「や。これはどうも初めまして。三軒茶屋の吉川です」


花子 「いや、別に出身地とかじゃなくて」


吉川 「あぁ。えーとワンルームの吉川です」


花子 「別に間取りでもない。違うの! トイレの花子さんて本当に知らない?」


吉川 「自意識過剰な花子さんだなぁ。知りませんよ」


花子 「ええー。あのね、トイレに入ると遊んでっていってくるっていう話聞いたことない?」


吉川 「エロいなぁ」


花子 「エロくないよ! 何を勘違いしてるのさっきから」


吉川 「だってねぇ、トイレで何して遊ぶの?」


花子 「なにって。え~と……トイレットペーパー早巻き取り対決とか」


吉川 「君ね。もっと地球の環境のこととか考えなさい」


花子 「いや、今のはほんの一例で……」


吉川 「そういう人間のエゴが地球をだめにするんだ! エゴからエコへ」


花子 「いや。私、人間じゃないんですよ」


吉川 「なにをバカな。人間じゃないとしたらゾウガメか? ゾウガメだとでもいうのか!?」


花子 「言わないけど、ゾウガメじゃないし」


吉川 「ほうらみろ。ゾウガメじゃないとしたら人間じゃないか」


花子 「なんでその二択なの? 他の選択肢はないの?」


吉川 「え、ひょっとして……」


花子 「うふふ」


吉川 「ゾウアザラシ?」


花子 「全然違う。とりあえずゾウから離れよう。ゾウ関連じゃないから」


吉川 「ゴマフアザラシ!」


花子 「アザラシでもない。わかってるよね? 見てわかってるよね!」


吉川 「ヒント! ヒント!」


花子 「そういうコーナーじゃない! なにヒントって」


吉川 「アンコール! アンコール!」


花子 「なにもしてないし!」


吉川 「メッコール! メッコール!」


花子 「意味わからない! なによメッコールって」


吉川 「韓国のコーラだよ」


花子 「それをどうしろって言うの! 違う! もっと怖がってよ!」


吉川 「なんで怖がるの?」


花子 「何でって。トイレの花子さんていったらオバケ的な……」


吉川 「オバっ!? え、そうなの?」


花子 「いやぁ、一応ね」


吉川 「はぁ~。こりゃ失礼しました」


花子 「いえいえ、こちらこそきちんと名乗らずに」


吉川 「あなたがトイレの……」


花子 「はい。トイレの……」


吉川 「どうしよう。本当に申し訳ない! なんとお詫びすればいいか」


花子 「気にしないで下さい。水に流します」



暗転

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る