ぺてんし

オバケ

おばけ　「うらめしや～」

吉川　　「……」

おばけ　「あの、うらめし」

吉川　　「……」

おばけ　「あれ？　見えてないのかな？　おばけだけに」

吉川　　「あぁっ！　もう、うざいなぁ」

おばけ　「見えてるんじゃん！」

吉川　　「見えてるよ！　なんだよさっきから」

おばけ　「いや、あの。うらめし……」

吉川　　「別にうらまれる覚えはない」

おばけ　「まぁそう言われるとこっちもうらむ覚えはないんですが」

吉川　　「なに？　なんか用？」

おばけ　「用って。あの、できればもっとビックリリアクションを」

吉川　　「なんでだよ！」

おばけ　「わぁ、怒ってます？　なんかご機嫌斜め？」

吉川　　「なんだよ、人の家に勝手に上がりこんで」

おばけ　「すみません、おどかしたかったもんで」

吉川　　「おどろかないよ。なにそれ？　おばけ？」

おばけ　「はい、おばけです」

吉川　　「インパクト弱ぇ～。そんなんで驚けってのが無理な注文」

おばけ　「やっぱそうっすかね」

吉川　　「もっとなんかできないの？　おばけってくらいだから化けるんだろ？」

おばけ　「はぁ、変身ですか。まぁできないこともないですけど……」

吉川　　「じゃ、それやれよ」

おばけ　「え～と、じゃ靴に……」

吉川　　「待て待て。靴って、オバQか」

おばけ　「定番といいますか」

吉川　　「まぁいい。オバQはともかくとして、靴ってさどうするの？」

おばけ　「履かれるんでしょうね」

吉川　　「履かれてどうするんだよ！　だいたい靴に化けて誰が驚くの？　わぁ。靴だ！　っておどろくやつなんかいないよ」

おばけ　「あー！　言われてみればそうですね」

吉川　　「言われる前に気づけよ」

おばけ　「ということは靴下もダメかぁ」

吉川　　「ダメだよ。なんでそんなレパートリーしかないんだ」

おばけ　「靴の中敷っネタもあったんですけどね。変化球的に」

吉川　　「ネタってなんだ。お前の化けはネタか」

おばけ　「あと座敷に上がろうとしたら靴下に穴があいてるのに気がついて必死に隠そうとする人ってネタもあります」

吉川　　「それほ完璧にただのネタだ」

おばけ　「見ます？　結構自信あるんですけど。うけますよー」

吉川　　「受けてどうするんだ。お前おばけだろ」

おばけ　「そうだった。思わず自分を見失ってしまった」

吉川　　「もっと根本的に怖い存在に化けろよ」

おばけ　「じゃ、核兵器に」

吉川　　「怖いよ！　確かに怖いけど、どうしろってんだよ！」

おばけ　「ダメですか？」

吉川　　「ダメって言うか、わかりづらいだろ！　目の前に核兵器があるシチュエーションないじゃん、普通」

おばけ　「そうですねぇ。じゃ癌に……」

吉川　　「余計わかりづらいよ！　人間ドックとか行かないとわからないじゃん」

おばけ　「転移しちゃうぞぉ！」

吉川　　「勝手にしてろ。そうじゃないだろ」

おばけ　「そんなこと言われたって、化けるのも簡単じゃないんですよ」

吉川　　「そうなんだ」

おばけ　「厳しい修行が必要なんですよ。靴の中敷なんて20年かかった」

吉川　　「そこに20年費やしちゃったわけ？」

おばけ　「そんな簡単にできるものじゃないんですよ」

吉川　　「靴下の穴隠す人くらい簡単にできそうだけどなぁ」

おばけ　「簡単じゃないですよ！」

吉川　　「そうかなぁ？」

おばけ　「あなた、そんなに言うんならね。なにか化けてみてくださいよ！」

吉川　　「ｻh・B陵揩Ь4ｽ1!ｳvｳW・ﾒtﾎ満ﾎ梢ｲ肩ﾌｱ8ﾕｼ呷{aP─鵐」

おばけ　「化けた！？」

暗転