貧乏神

吉川  「本当、困るから帰ってくれ」


貧乏神 「そこをなんとか!」


吉川  「無理だって」


貧乏神 「サービス券つけちゃう」


吉川  「なんだよ、サービス券て」


貧乏神 「これ福岡のまんぷくぷく亭で500円分になるから」


吉川  「福岡のサービス券もらっても行けないだろ!」


貧乏神 「先週もらってきた」


吉川  「全然いらない。帰ってくれ」


貧乏神 「大丈夫だから! 痛くしないから!」


吉川  「なにを痛くしないんだ。何する気だよ」


貧乏神 「ただ居つくだけ。本当それだけ」


吉川  「うち部屋狭いもの」


貧乏神 「あー、全然平気。そういうの気にしないタイプだから」


吉川  「こっちが気にするんだよ」


貧乏神 「ペットだと思えばいいんじゃない?」


吉川  「こんな可愛くないペット飼いたくないよ」


貧乏神 「あー! 俺の可愛いところ知らないな? 意外とドジなんだぜ」


吉川  「知らないよ! こんなおっさんがドジでもまるで可愛くない」


貧乏神 「あとね、チワワのモノマネが得意」


吉川  「モノマネされても……」


貧乏神 「匂いとかすっげー似てるの!」


吉川  「匂いを真似るな。どうリアクションすりゃいいんだ」


貧乏神 「それはホラ。フリースタイルで。騙されたと思って嗅いでみて」


吉川  「なんだフリースタイルって。あ! クッセ! 犬クッセ!」


貧乏神 「ね? 似てるでしょ?」


吉川  「ね? じゃないよ。バカ! 帰れよ!」


貧乏神 「そうもいきませんよ。もうマーキングしちゃったから」


吉川  「するなよ。人の家に勝手にマーキングするなよ」


貧乏神 「ここはもう俺の縄張りだもん。他のチワワは一匹たりとも」


吉川  「マーキングってチワワ限定か。神様のくせにやることが小さい」


貧乏神 「あ、そういうこと言います? 実力見せちゃいますよ?」


吉川  「結構です。帰ってください」


貧乏神 「待って! 見てよぉ。一生懸命練習したんだから」


吉川  「何を必死になってるんだ」


貧乏神 「それではモノマネシリーズ!」


吉川  「モノマネかよ。宴会芸みたいな実力だな」


貧乏神 「まずはゼウス……天罰じゃ!」


吉川  「待て待て待て、知らないよ! ゼウスなんて知らないもん。そんなのやり放題じゃん」


貧乏神 「続きまして、きゃりーぱみゅぱみゅ」


吉川  「落差! ゼウスと同列の存在なの? 気持ちがついていかない」


貧乏神 「続きまして、裏返された時のヒトデのマネ」


吉川  「スケールダウンのしかたが半端ないだろ。ついに人間ですらなくなった」


貧乏神 「見て見て! この右腕の使い方が似てるの!」


吉川  「知らないよ。おまえ、本当に帰れよ」


貧乏神 「あとテーブルマジックもあるんだけど。コインが消えるやつ」


吉川  「お前が消えてくれ」


貧乏神 「わかりましたよ。そこまで言うなら行きますよ……」


吉川  「あ、どっか行くんだ」


貧乏神 「では、お世話になりました」


吉川  「はいはい、バイバ~イ」


貧乏神 「ちなみに、今夜は遅くなりますから夕飯は結構です」


吉川  「帰ってくるのかよ! なにしに行くんだ」


貧乏神 「こう見えてもいろいろと忙しいんですよ」


吉川  「なにが忙しいんだ」


貧乏神 「貧乏暇なしで……」



暗転




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る