ネットミーティング
良子 「……もしもし? 吉川くん? だ~れだ!」
吉川 「……良子だろ?」
良子 「すっごーい! なんでわかったの。声?」
吉川 「こっちからかけてるんだからわかるよ」
良子 「そうだった! ネットミーティングって初めてだから混乱しちゃった」
吉川 「いまどきみんなやってるだろ」
良子 「えへ。だって吉川くん以外に知り合いいないもんっ♪」
吉川 「サラッと悲しい境遇を語るなぁ」
良子 「吉川くん以外の友達は無機物だけだよ」
吉川 「ちょうどよかった。明後日あいてる? 夜にオンライン宅飲みしようかと」
良子 「社会の窓なら全開放中よ」
吉川 「そんなものあけなくていい。明後日ひま?」
良子 「
吉川 「なんだエビって、どんな予定が入ってるんだ」
良子 「なになに? ひょっとして裏取引のお誘い?」
吉川 「そんなものにはお誘いしない。忙しかったら別にいいんだけど」
良子 「あ! 明後日はちょうど仕事をクビになる日だった。暇だよ」
吉川 「そんな無理やり暇にしなくていい」
良子 「違うの。ちょうど取引先の金庫から売上パクって来たところだったから。奇遇!」
吉川 「そんな嫌な奇遇に巻き込まないでくれ」
良子 「そんでどこに行くの? 国外?」
吉川 「国外は勝手に逃亡してくれ。行かないよ。自宅でこうやって通話しながら飲むの」
良子 「ドレスコードは? あ、ひょっとしていやらしい格好期待してる?」
吉川 「ないよ。自宅にドレスコードはない」
良子 「身体が目的なんだわ! 良子の染色体が目的なのね!」
吉川 「そんな具体的に目的にしない。染色体をどうしろというのだ」
良子 「でも良子、自宅待機で太っちゃったしなぁ」
吉川 「そうなんだ」
良子 「うん。生肉の食べすぎで」
吉川 「すごいものばっかり食べてるんだなぁ」
良子 「早く食べないと腐っちゃうから」
吉川 「料理すればいいのに」
良子 「ウガッ! 火……コワイ……」
吉川 「なんで退化してるんだ」
良子 「オマエ……イイヤツ……ニククエ」
吉川 「いらないよ」
良子 「ニンゲン……ワルイヤツ……マチ……コワス」
吉川 「壊すな。もういいから、で飲みは?」
良子 「でもなぁ、良子毛むくじゃらだし」
吉川 「毛深いくらいの表現にしろよ。何者なんだ」
良子 「あの人くらい毛深いよ。えーと……外人っぽい名前の人」
吉川 「誰だろ? ショーン・コネリー?」
良子 「違う、二人組みの右側の方。ボケの人」
吉川 「えー、誰だ」
良子 「あ、ムックだ」
吉川 「そりゃ、毛むくじゃらだな」
良子 「でも、吉川くんのためなら思い切って脱いじゃおうかな」
吉川 「別にそういうのを求めてない」
良子 「久しぶりだなぁ。……ムック脱ぐの」
吉川 「ムック着てたんだ。中身だったんだ」
良子 「ちょっと痩せなきゃ!」
吉川 「別にそんなに頑張らなくてもいいよ。明後日までに仕上げるの無理でしょ」
良子 「こう見えてもスポーツ万能なんだぞ!」
吉川 「そうなんだ。意外」
良子 「宇宙にだって行ったんだから!」
吉川 「ガチャピンでやる気か?」
暗転
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