影武者
吉川 「だから迷惑だって」
影武者 「殿、そんなこと言わずに」
吉川 「殿呼ばわりされる筋合いはない。何で突然」
影武者 「殿の身に危険が及ぶ可能性があるからでござる」
吉川 「なんで? 俺なんかやった?」
影武者 「突然、巨大隕石が落下してきたり……」
吉川 「そんなの全滅じゃん。俺の身とかの問題じゃないだろ」
影武者 「外は怖いビールスでいっぱいでござる」
吉川 「ビールスて。ウィルスのことか?」
影武者 「あと、呪いとか……」
吉川 「死ぬの? そういうので殺されるの?」
影武者 「そういうことがないように、拙者が代わりに」
吉川 「平気だって。狙われるようなことしてないもん」
影武者 「あっ! なにを?」
吉川 「なにって、二色パンを食べようと」
影武者 「ダメでござる。お毒見するでござる」
吉川 「いいよ。これ、俺が買って来たやつだから安全」
影武者 「途中で何者かが毒を入れたかもしれないでござる」
吉川 「何者かって誰だよ」
影武者 「例えば拙者とか……」
吉川 「お前かよ」
影武者 「例えばの話でござる。お毒見するでござる」
吉川 「おいっ! ござるじゃねーよ。返せよ」
影武者 「む……カッ……ハッ……やられた……」
吉川 「まじ!? 毒なの?」
影武者 「クリームだと思ったらチョコの側だったでござる。無念」
吉川 「無念じゃねーよ。もういいだろ、返せよ」
影武者 「クリームの方に毒が仕込まれてるかもしれないでござる。まだまだ」
吉川 「おまえ、半分以上食べてるじゃねーか」
影武者 「ガハッ!? ……こ、これは」
吉川 「毒!?」
影武者 「クリームとチョコの華麗なるハーモニー。まるで二色パン!」
吉川 「初めから二色パンだよ。おまえ、もういい加減にしろよ」
影武者 「口の中が甘くなったでござる。コーヒーを毒見したいでござる」
吉川 「ふざけんなよ。ほとんどパンしかのこってねーじゃん。素パンじゃん」
影武者 「おほっ! こんなところにコーヒーが。毒見せねば」
吉川 「飲むな!」
影武者 「あっち! 超熱いっ! 殿、これは罠でござる」
吉川 「知るかバカッ!」
影武者 「殿が火傷する前でよかったでござる。セーフ」
影武者 「ガハッ!」
吉川 「どうした? 毒か?」
影武者 「拙者はミルクと砂糖入れないとダメでござる」
吉川 「ふざけんなよ、なに勝手にコーヒー牛乳にしてんだよ」
吉川 「お前の存在がアウトだ。どっか行けよ」
影武者 「殿のお側を離れるわけにはいかないでござる」
吉川 「だいたい何で急に俺に影武者?」
影武者 「殿はお忘れですか? 拙者は殿に命を救われたでござる」
吉川 「そ、そんなことあったっけ?」
影武者 「覚えてないのも無理はないでござる。あれはそう……今日みたいに寒い日でござった」
吉川 「……いつのことだろう?」
影武者 「餓死寸前だった拙者に、二色パンとコーヒーを恵んでくれて……」
吉川 「今じゃねーか。今さっきじゃないか」
影武者 「その時、心に誓ったでござる」
吉川 「誓わなていい」
影武者 「ぜひ晩御飯もごちそうになろうと」
吉川 「メシのことかよ。何しに来たんだ」
影武者 「ともかく、殿の身になにかあったら拙者は困るでござる」
吉川 「じゃぁさ、自殺とかしたらどうするの?」
影武者 「え……」
吉川 「自殺」
影武者 「それは……とりあえず、晩御飯をいただいてから考えるでござる」
吉川 「なんで食事優先なんだ」
影武者 「殿はそんなことする人じゃないでござる」
吉川 「何でわかるんだ」
影武者 「殿のことなら何でも知ってるでござる。ちょっとしたストーカーでござるよ」
吉川 「衝撃的なことをサラッとカミングアウトするなぁ」
影武者 「殿はもっと友達とか作った方がいいでござる」
吉川 「大きなお世話だ」
影武者 「もっと明るいキャラを前面にだしてアピールするでござる」
吉川 「うるさいなぁ。そんなこと指図される覚えはない」
影武者 「みんな殿のことなんて言ってるか知ってるでござるか?」
吉川 「なんて?」
影武者 「影が薄いって」
吉川 「お前に比べたらな!」
暗転
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