似てる

藤村 「吉川さんて、アレですよね?」


吉川 「ん?」


藤村 「アレに似てますよね?」


吉川 「なになに?」


藤村 「ペイズリー」


吉川 「ペイズリーって……柄の?」


藤村 「そうそう、ペイズリー」


吉川 「似てるって、柄じゃん。似てたくないよ」


藤村 「ほら、面長じゃないですか」


吉川 「まぁね」


藤村 「馬面っていうか、馬に似たペイズリー?」


吉川 「結局ペイズリーか。そこは頑として譲らないんだ」


藤村 「だって似てますもん」


吉川 「そんなこといったらアレだ。お前はアレに似てる」


藤村 「なんです?」


吉川 「ミニチュアダックス」


藤村 「あぁ。よく言われます」


吉川 「言われるんだ。納得してるんだ」


藤村 「毛づやの良さとか似てるって言われます」


吉川 「そんなに似てねーよ!」


藤村 「あと、吉川さんの声ってアレに似てます」


吉川 「なに? 芸能人?」


藤村 「音姫」


吉川 「音姫って、トイレのかよ」


藤村 「こもってボソボソ言ってるあたりがクリソツ」


吉川 「大きなお世話だよ」


藤村 「ちょっと真似してくれません?」


吉川 「え~、ご……ごぼごぼごぼ……」


藤村 「似てるー! 本物の音姫があるのかと思っちゃった」


吉川 「全然嬉しくない。褒められたくなかった」


藤村 「それ、なんか儲けられますよ。一曲100円とかで」


吉川 「どうやって儲けるんだ。トイレの個室に、音姫の人とかいたら気持ち悪い」


藤村 「埋もれさせておくには惜しい才能ですね」


吉川 「できれば、そっと埋もれさせておいて欲しい」


藤村 「またまた、謙遜して」


吉川 「いや、謙遜とかじゃなくて。そんなこといったら、お前の声なんかあれに似てる」


藤村 「なんですか?」


吉川 「ラップ音」


藤村 「あちゃー。バレました?」


吉川 「バレたって、アレはお前か」


藤村 「時給680円でやってるんですよ」


吉川 「ラップ音てあれだよ? チェキラッチョとかじゃなくて、ポルターガイストの方だよ?」


藤村 「そうそう。ガタピシッとかいうやつですよ」


吉川 「へ、へぇ……。仕事なんだ、ああいうのって」


藤村 「まぁ、ちょうど僕に職業適性があってるという感じで」


吉川 「そんなのに向いていたくないなぁ……」


藤村 「ガタガタガタ! 山形! 新潟! クワガタ!」


吉川 「そんなに似てねーじゃん! なんでオリジナルアレンジ入れてくるんだよ」


藤村 「あと、アレですよ。吉川さんの髪型」


吉川 「今度は誰に似てるの?」


藤村 「一休さん」


吉川 「坊主じゃん! 髪型の例えでその名前は普通出てこないでしょ」


藤村 「スタイリングとか真似してるんですか?」


吉川 「いや、俺は毛があるからさ、一休さんと違うでしょ?」


藤村 「地肌の感じとか似てますよ」


吉川 「なんかね、全部不愉快。いちいち不愉快だよね」


藤村 「いいじゃないですか! 休ちゃんですよ?」


吉川 「略し方! そんな一休さんの愛称初めて聞いたよ。トンチ得意そうな頭ってことか?」


藤村 「そういう知性的な部分は全然似てない」


吉川 「おまっ! なんだよ! なんで知性を見た目で測るんだよ」


藤村 「頭皮だけ、音姫には似てました」


吉川 「また、音姫か。あれだ、お前の髪型はあれに似てる」


藤村 「誰ですか?」


吉川 「サザエさん」


藤村 「あっ!? オナベ火にかけっぱなしだったわ」


吉川 「いや、べつにうっかりは真似しなくていいから」


藤村 「危なかった。……煮物が焦げちゃうところだった」


吉川 「煮て……るのかよ!」



暗転



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