エレベーター

エレ女子エレベーターガール 「ご利用階数をお申し付けください」


吉川    「八階で」


エレ女子エレベーターガール 「ブッヒーッ!」


吉川    「え……」


エレ女子エレベーターガール 「ブヒヒーっ!」


吉川    「あの……八階……」


エレ女子エレベーターガール 「悟空の兄貴、天竺まではどのくらいブヒ?」


吉川    「あ。八戒? 猪八戒?」


エレ女子エレベーターガール 「ブヒブヒ」


吉川    「なるほどね、八階と猪八戒ね。……いや、だから?」


エレ女子エレベーターガール 「ご利用階数をお申し付けください」


吉川    「八階には行ってくれないの?」


エレ女子エレベーターガール 「ブヒ」


吉川    「わかったわかった。じゃ、えっと……五階」


エレ女子エレベーターガール 「違うの!」


吉川    「わぁ。予想通りの展開」


エレ女子エレベーターガール 「確かに人間は地球を破壊してきたけど、でもその過ちに気づいてる人もいるの!」


吉川    「予想外に壮大な誤解だ……」


エレ女子エレベーターガール 「だから……だから、もうこれ以上恥かしい罰ゲームはよして!」


吉川    「急激にスケールが縮んだ。どういう状況だか理解できない」


エレ女子エレベーターガール 「誤解なんです! 本当はみんな、つぶあんが好きなんです」


吉川    「状況がわからない上に収拾がつかなくなってきてる」


エレ女子エレベーターガール 「ご利用階数をお申し付けください」


吉川    「なんか、ちょっと楽しくなってきた。え~と、二階はどんな?」


エレ女子エレベーターガール 「二階、婦人服売り場になります」


吉川    「え……」


エレ女子エレベーターガール 「二階、婦人服売り場になります!」


吉川    「あ、普通なんだ。なんも思いつかなかったのかな」


エレ女子エレベーターガール 「チッ……」


吉川    「うわぁ。舌打ちされた。やばい、なんか雰囲気悪くなってきた」


エレ女子エレベーターガール 「ご利用階数をお申し付けください」


吉川    「どうしよう。えっと……四、四階?」


エレ女子エレベーターガール 「四階、家庭用品売り場になります」


吉川    「えー。なんか、ありそうじゃん。よ、妖怪とか。音読みで四階と歯科医とか。ね?」


エレ女子エレベーターガール 「けっ……」


吉川    「うわぁ。お気にめさなかった。というか、なんで俺はエレベーターで気を使ってるんだ」


エレ女子エレベーターガール 「ご利用階数をお申し付けください」


吉川    「よくよく考えたら普通に買い物に来たんだった。別に気を使わなくてもいいはず。三階で」


エレ女子エレベーターガール 「はぁ……」


吉川    「うわ、ため息はかれた。あの……三階。三階にお願いします」


エレ女子エレベーターガール 「お疲れ様でした」


吉川    「え……。なんで? あの、なんで諦めムードみたいの漂ってるの?」


エレ女子エレベーターガール 「さようなら」


吉川    「ちょっ、どこいっちゃうの? え、……散会?」



暗転

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