ぺてんし

改造手術

博士　「気がついたかね？　吉川くん」

吉川　「はっ！？　身体が拘束されてる」

博士　「手術は成功じゃ」

吉川　「なに！？　手術って！？　なに勝手にしてるの？」

博士　「あ、怒った？」

吉川　「怒るよ！　ばっかじゃねーの？　なにしてんだよ！」

博士　「もっと怒るのじゃ、その怒りが力となる」

吉川　「なにいってんの？　バカ！　早くこれはずせよ」

博士　「えー。だってはずしたらぶつでしょ？」

吉川　「いいから取れよ！」

博士　「そんな改造されたパワーでぶたれたら死んじゃうじゃん」

吉川　「改造したんか？　勝手にパワーアップさせたんか？」

博士　「つい、できごころで」

吉川　「できごろこで、なんで改造するの？　本人の許可なく」

博士　「喜ぶ顔が見たくて、内緒にしてたの。サプラ～イズ！」

吉川　「喜ばないよ。とりあえず、これはずせよ！」

博士　「ぶたない？」

吉川　「ぶたないから、はずしなさい。はずさないとぶつよ」

博士　「わかった」

吉川　「あぁ、手首アザになっちゃってるよ」

博士　「ごめんね？」

吉川　「ごめんじゃないでしょ。なにしたの！」

博士　「そんな声を荒げないでよ。怖いじゃん」

吉川　「俺のほうが怖いよ。勝手に改造なんかされて」

博士　「大丈夫だよ。きっと喜ぶんじゃないかなぁ」

吉川　「どんな改造したの？」

博士　「仮面吉田ー」

吉川　「なんだよ、吉田って、名前変わってるじゃん」

博士　「偽名。本名だとすぐばれちゃうじゃん？」

吉川　「そういう問題か？」

博士　「川田にするか迷ったんだけど、……どっちがいい？」

吉川　「どっちでもいいよ。なに仮面て」

博士　「これ、仮面」

吉川　「キャッチャーマスクじゃん！」

博士　「防御力を重視した」

吉川　「確かに防御力高いかもしれないけど、丸見えじゃん。顔隠せてないじゃん」

博士　「ボールとか当たっても大丈夫だよ。首がガクーンてなるけど」

吉川　「そういうパワーアップはないんだ」

博士　「あとビームとかは防げないから、きたら目をつぶること」

吉川　「えー。それで防げちゃうの？　ビームってそういうものなの？」

博士　「まぁ、仮面に関しては適当にドンキホーテで買ってきた奴だからあれだけど」

吉川　「開発してないんだ。お求めやすい価格で手に入れたんだ」

博士　「改造の目玉はお腹のベルト」

吉川　「はっ！？　気がつかなかった」

博士　「ちなみにサイズはフリー」

吉川　「いや、別にその売りは嬉しくない。フリーで助かったぁって言うとでも思った？」

博士　「見て見て、上のボタン。ポチッと押して」

吉川　「なんとなく読めてるけど……」

博士　「ほら！　回った！　回った！　成功じゃ！　涼しぃ～♪」

吉川　「やっぱり」

博士　「なにがやっぱりだ！　こんなもんじゃないぞ。横のスイッチ」

吉川　「これ？」

博士　「あ～、涼しい。なんと三段階切り替え」

吉川　「いらない！　まるでいらない！」

博士　「微風とかすごい優しいの」

吉川　「なんだよ微風って！」

博士　「あとね、スリープモードもついてる」

吉川　「お前、これただの扇風機じゃんか」

博士　「ただのじゃないよ！　首ふりモードって書いてあるボタン押して」

吉川　「首ふりって、まるっきり扇風……ちょっ……なんだよこれ……おい」

博士　「なんと吉川くんの首が左右に」

吉川　「ふざけんな！　気持ち悪い改造ほどこすなよ！」

博士　「横断歩道とか渡るときにね、左右の確認しなきゃダメじゃん？」

吉川　「そんなののためかよ」

博士　「正義の味方は良い子の模範とならなくては」

吉川　「これだけなの？」

博士　「え……？」

吉川　「改造って、これだけ？　変身とかは？」

博士　「えっと、キャッチャーマスク……」

吉川　「なにそれ？　自発的にかぶるんだ？　勝手に扇風機回してかぶるだけなんだ」

博士　「う、うん」

吉川　「パワーとか別にアップして無いのね？」

博士　「その辺は自主的にトレーニングとかしてもらわないと……」

吉川　「そんなので無理やり戦わせられるんだ」

博士　「うん。平和のためにがんばってね」

吉川　「ところで、誰と戦うの？」

博士　「そんなの怪人に決まってるじゃん」

吉川　「その怪人はいったいどこに？」

博士　「よくぞ聞いてくれた！　ちょっと待ってね、いま造ってるから」

暗転