伝説の
吉川 「いただきます」
長老 「おぉ! そなた様は」
吉川 「はい?」
長老 「その割り箸は村に伝わる伝説の割り箸。いままで沢山の者が挑んできたが、いまだ割れたものはおらず」
吉川 「へぇ、そうっすか」
長老 「そうっすかじゃないよ! 村の一大事よ。なにライトにかまえちゃってるの?」
吉川 「はぁ……」
長老 「あっ!? シャッシャッってした! 割り箸同士をこすりつけてシャッシャッとした!」
吉川 「しますよ。なんかトゲトゲになってるし」
長老 「伝説の通りだ。……まさにあなたが勇者様!」
吉川 「ちょっとあなた、食事の邪魔だなぁ」
長老 「まさか生きてるうちに勇者様に会えるとは、ちょっとサインしてください」
吉川 「いや、いまから食事を……」
長老 「食事なんていつでもできるだろっ!」
吉川 「なに逆ギレしてんだ。サインの方がいつだってできる」
長老 「絶対だな? すごい崖ップチでファイト一発みたいな状況になってもサインするんだな!」
吉川 「論理がメチャクチャだな。そりゃ、できないけど、そんなこと言ったら食事だって出来ない」
長老 「食事なんかしなくたってリポデー飲めばいいだろリポデー!」
吉川 「なんか勇者とか言ってるわりには扱いがぞんざいだなぁ」
長老 「はっ! これは失礼を。やっぱり殺されますか?」
吉川 「は?」
長老 「勇者毀損罪で殺されますか?」
吉川 「いや、別に殺しませんよ。そんなの犯罪じゃないですか」
長老 「伝説の割り箸でつままれますか?」
吉川 「つまみません」
長老 「キューッとつままれますか? 主に突起をつままれますか?」
吉川 「あなたしつこいな。つままないって言ってるじゃないか。なんだ突起って」
長老 「さすが勇者様。お心が広うございますな」
吉川 「別に普通だと思うけど」
長老 「いやいや、ご謙遜を。ざっと二十平米くらいですかな?」
吉川 「別に心の広さを具体的に示さなくても結構です」
長老 「私はね。こう見えても二十四平米はありますぞ」
吉川 「自分の方があるんじゃん。なに? 自慢?」
長老 「そんな、滅相もない。勇者様も努力次第では二十二平米も夢ではございませんぞ」
吉川 「努力してもかなわないんだ。だいたいどういう方法で計ったんだ」
長老 「知りとうございますか?」
吉川 「別にいい。とりあえず食事をします」
長老 「そんなに知りたいですか?」
吉川 「もういいって! あなた、いい加減煩わしいな」
長老 「お怒りはごもっとも。つまみますか? 敏感な突起をつまみますかな?」
吉川 「つままねーよ! だいたい、何で割り箸で勇者なんだ。どんな伝説だよ」
長老 「それは……村に伝わる……なんというか……都市伝説的な……」
吉川 「伝説じゃねーじゃん。噂話じゃん」
長老 「そんなこと言うなよ。すねちゃうぞ」
吉川 「本当にうざったいなぁ。もう帰ってくれ。大人しく食事させてくれよ」
長老 「じゃ、帰りますから、帰りますから、最後にサインだけでも……」
吉川 「はいはい。サインしたらどっかいくんだな」
長老 「あれ? このキャップ……固っ」
吉川 「貸してみ。なんだよ軽いじゃん」
長老 「おぉ! そのサインペンは伝説の……」
暗転
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