パンダ
吉川 「あのさぁ……」
パン田 「ん?」
吉川 「違ってたら悪いんだけど、……パンダだよね?」
パン田 「まさか!」
吉川 「え、あ、違うの?」
パン田 「勘弁してくれよー。いったいどこが」
吉川 「目の周りのクマとか……」
パン田 「あ~、これは寝てないから」
吉川 「寝てないからなの?」
パン田 「だいぶ寝てないね」
吉川 「どのくらい?」
パン田 「かれこれ……六年位かな」
吉川 「そりゃ寝てねーな! なんかの修行か」
パン田 「いやぁ、なんとなく」
吉川 「なんとなくで六年起きっぱなしなんだ」
パン田 「気にしてるんだから言わないでよ」
吉川 「一応気にしてるんだ。そんな真っ黒で」
パン田 「そりゃ、クマに似てるとか言われたら……」
吉川 「違うよ! 目の周りのクマだよ。確かにちょっと熊っぽいけど」
パン田 「ガーン!」
吉川 「いや、いい意味で。なんとなくプーさんみたいな可愛いイメージで」
パン田 「いい意味か。照れるなぁ。耳が真っ赤になっちゃう」
吉川 「耳も黒いけどね」
パン田 「まじで!? 耳とか意識してなかったよ」
吉川 「ちなみに、鼻とかも黒め、あと手とかも」
パン田 「手はあれだ。日焼け」
吉川 「えー? 焼きすぎだろ、手だけ」
パン田 「この間、手のひらを太陽にすかしてみてたから」
吉川 「なに少年の心もっちゃってるんだ。パンダみたいなナリして」
パン田 「ミミズだってパンダだってアメンボだって友達だよ!?」
吉川 「いま言ったよね? 軽い自白したよね?」
パン田 「言ってねーよ。もう、笹でも食おう」
吉川 「さ、笹っ!? 明らかにパンダじゃん!」
パン田 「しまった。いや、食べない食べない。舐めるだけ」
吉川 「舐めるのもおかしいだろ」
パン田 「いや、あの……七夕の風習で」
吉川 「いつの話だ。笹を舐める風習なんてそもそもない」
パン田 「我が家では伝統的に七夕を記念して年がら年中笹を舐める」
吉川 「そんなにずっと舐めてるのか」
パン田 「舐めてないと彦星と織姫が会えない」
吉川 「川幅の広いミルキーウェイだなぁ」
パン田 「笹うめぇ~」
吉川 「やっぱ食ってるじゃん! パンダじゃん!」
パン田 「……どこでわかった?」
吉川 「見た目」
パン田 「そこかぁ!」
吉川 「いや、そこって。見た目は基本だよね。まずなんとかするよね」
パン田 「匂いとかは結構隠したと思うんだけど」
吉川 「でも完璧にパンダだもん」
パン田 「まじで? じゃ、なに? いままで気がつかなかったんじゃなくて?」
吉川 「怖くて言えなかった」
パン田 「なんだよぉ。騙せてると思っていい気になってたじゃん」
吉川 「もう第一印象からバレバレでした」
パン田 「じゃ、言葉とか無理になおさなくていいアルネ?」
吉川 「あ、急に中国人になった」
パン田 「当然のことアルヨ」
吉川 「そうなんだ。無駄な努力してたんだ」
パン田 「でもあれアルネ? ワタチ、可愛い系アルネ? プーさんアルネ?」
吉川 「まぁ、自分で言うのはちょっといやらしいけど」
パン田 「パンダのプーさんアルヨ」
吉川 「はは。そうっすね。それ今の時代割と危険な発言だから気をつけたほうが良いよ」
パン田 「ヤバい? じゃ、略してダパンプってことにしようかな」
吉川 「いろんな方面に迷惑かけるな」
暗転
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