職人探訪

藤村 「こんばんわ『昭和の職人探訪』リポーターの藤村です。 本日は現在、日本で最後の一人になってしまわれましたスタンプラーの 吉川さんの元に来ております。よろしくお願いします。吉川さん」


吉川 「よろしく」


藤村 「さて、吉川さんと言えば、スタンプラーとして重要無形文化財に任命されかけたことも有名ですが」


吉川 「されかけましたね。かなりギリギリをかすりました」


藤村 「されかけた時は、どんなお気持ちでした?」


吉川 「まぁ、オラ、ただ好きでやってるだけだから……」


藤村 「そうですか。ここでスタンプラーについて、軽くご説明願えますか?」


吉川 「まぁ、スタンプラーと横文字になってるが、切手舐め師と言った方が通りはいいかな?」


藤村 「つまり、切手を舐めて、貼り付ける役ですね」


吉川 「んだ」


藤村 「吉川さんは、いつ頃からこのスタンプラーを?」


吉川 「あれは昭和の30年だったかな、元々は郵便職員としてやってたんだが、 定年した後も切手の味が忘れられずに、こうしてボランティアで舐めに来てるだ」


藤村 「なるほど。スタンプラーをしていて一番嬉しかったことは?」


吉川 「そりゃ、美味ぇ切手に出会えた時だよ」


藤村 「辛かった思い出などは?」


吉川 「口が臭いって言われた時かな……。モンダミンしてるのに」


藤村 「そんな吉川さんですが、ある特技をお持ちのようで」


吉川 「特技だなんて。オラ、好きでやってるだけだ」


藤村 「なんと世界中の切手を舐めるだけでどこの国かピタリと当てると言う」


吉川 「まぁ、50年も舐めてるとだいたいの味はわかるわな」


藤村 「それでは軽くお願いしてみましょう」


吉川 「……あ、これはエストニアだな。バルト三国の。ちょっと塩気がある」


藤村 「正解です」


吉川 「これはブルネイだ。若干の甘味がある」


藤村 「これもまた正解です」


吉川 「最後のこれは……。ハッハッハ。これはもう舐めるまでもない、日本の京橋さんだ」


藤村 「はい、日本ですが……京橋さん?」


吉川 「んだ。京橋郵便局」


藤村 「なんと、買った郵便局名まで! これは驚きました」


吉川 「どちらかというと、北の方はしょっぱくて南の方は甘い傾向があるだね」


藤村 「なるほど。勉強になります」


吉川 「まぁ、切手を舐めることならオラに任せるだ!」


藤村 「頼もしい限りです。それでは『昭和の職人探訪』また来週」


吉川 「またらはまらちゅー」


藤村 「……吉川さん?」


吉川 「_ヲrvモシォ衡Iツ・ワS'!・ス嬖・OR/T挺・^」


藤村 「お、おいっ! 大丈夫か?」


吉川 「・セ謙ィリ「?ッ,?坑獗xロィェ・.ズ」


藤村 「この人どうしちゃったんだ? ……え? LSD?」



暗転

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