誕生日

藤村 「お、久しぶり」


吉川 「久しぶり」


藤村 「そういえば、おめでとう」


吉川 「あ、覚えていてくれたんだ。ありがとう」


藤村 「そりゃ覚えてるさ。世間も慌ただしいし」


吉川 「え? 世間?」


藤村 「随分たっちゃったけど」


吉川 「なにが?」


藤村 「新年明けまして」


吉川 「遅いよ! それは、遅すぎるよ」


藤村 「だって会わなかったんだもん」


吉川 「いや、でも普通いわないでしょ? 思いっきり年の瀬だよ」


藤村 「いや、俺にとっては初吉川だからさ」


吉川 「なんか人に会うのをイベントみたいに言わないで欲しい」


藤村 「しかし、めでたいね」


吉川 「違うの。あのね、俺さ……誕生日なんだけど」


藤村 「まじ!? お前が!?」


吉川 「う、うん」


藤村 「お前がねぇ。ボン・ジョヴィだったとは」


吉川 「違うよ。ボン・ジョヴィじゃないよ?」


藤村 「えー!? 今言ったばっかりなのに」


吉川 「何を聞いてるんだ。ボン・ジョヴィだとカミングアウトする人はボン・ジョヴィのメンバーだけだよ」


藤村 「ボン・ジョヴィじゃないとすると、誰ジョヴィなの?」


吉川 「誰ジョヴィでもないよ。吉川だよ」


藤村 「吉川ジョヴィ?」


吉川 「ジョヴィはつかない! 人はなにがしかのジョヴィを伴っていきてるわけじゃない!」


藤村 「そうか。俺はジョヴィじゃないもんな。でもお前ならばひょっとしたら、と思ってな」


吉川 「託すなよ。人にジョヴィを」


藤村 「で、何ジョヴィの話なの?」


吉川 「何ジョヴィっていうか、誕生日」


藤村 「タン・ジョヴィ?」


吉川 「いや、ジョヴィ関連から一旦離れて。誕生日」


藤村 「あぁ、誕生日なのか」


吉川 「そ、そう」


藤村 「あ、これ見て」


吉川 「え、そのティーポット! 俺欲しかったやつじゃん?」


藤村 「へへへ、いいでしょ」


吉川 「うわぁ。本当?」


藤村 「本物だよ」


吉川 「ありがとう」


藤村 「何が?」


吉川 「いや、あの……」


藤村 「いいでしょ?」


吉川 「うん、プレゼントじゃ?」


藤村 「なんで?」


吉川 「何でって、誕生日……」


藤村 「関係ないじゃん。そんなの」


吉川 「いや。そう正面きっていわれると」


藤村 「ただ自慢しただけだよ」


吉川 「えー!」


藤村 「お前の羨ましそうな顔を見たかっただけ」


吉川 「ひどい」


藤村 「欲しい?」


吉川 「そりゃ、欲しいけど……」


藤村 「じゃ、ひざまづけ」


吉川 「え……」


藤村 「ほら、靴をなめろ、クソ豚が」


吉川 「なんで、誕生日にそんな屈辱を味わわなきゃいけないんだ」


藤村 「じゃ、このティーポットどうしようかなー。割っちゃおうかなー」


吉川 「陰険! すこぶる陰険!」


藤村 「えーい、割ってしまえー」


吉川 「待った待った! ひざまづきます。お願いします。割らないで下さい」


藤村 「はーはっはっは」


吉川 「くっ」


藤村 「ブウと言え、クソ豚め」


吉川 「ブ、ブゥ……」


藤村 「ほら、プレゼントだ」


吉川 「ブー!」


藤村 「さすが誕生日だ」


吉川 「ブウ?」


藤村 「おめでたい奴め」



暗転



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