心理
吉川 「では心理テストで」
藤村 「はい」
吉川 「あなたの目の前に、木が立っています」
藤村 「いいえ」
吉川 「え?」
藤村 「いいえ、立ってません」
吉川 「いや、立ってるんですよ」
藤村 「いいえ」
吉川 「では、丘の上に家が建っています」
藤村 「いいえ」
吉川 「建ってるの!」
藤村 「いいえ」
吉川 「丘は?」
藤村 「丘もありません」
吉川 「なんだよ、家建ててよ」
藤村 「そんなこといわれても無理です」
吉川 「お願いだから」
藤村 「日照権の問題などもありますし」
吉川 「日照権!? そんな理由で建たないの?」
藤村 「あと、地価が高いし」
吉川 「いや、地価とか無いから。安いから」
藤村 「俺はそんな安い男じゃない」
吉川 「違うの。例え話。心理テストってさ、例えばなのよ。わかる?」
藤村 「じゃ、ローン組みますよ」
吉川 「いきなり建てていいから。誰も怒らないから」
藤村 「これは自分自身の問題です。口出ししないでいただきたい」
吉川 「じゃ、他の質問を……」
藤村 「はい」
吉川 「えーとですね、花があるんですよ」
藤村 「はい」
吉川 「大丈夫? あるんですよ。いいですか?」
藤村 「そんなに執拗に確認しなくてもいいですよ」
吉川 「よかったぁ。で、その花の色は何色ですか?」
藤村 「バラ色ですね」
吉川 「バ……。いや、そうじゃなくて、色がですね」
藤村 「バラ色です」
吉川 「種類じゃないんですよ、えーと花の種類じゃなくて、その色が……」
藤村 「バラ色です」
吉川 「バラ色って何色ですか!? なんか、そんなのハッピーすぎじゃないですか!」
藤村 「だって、何色ならいいんですか?」
吉川 「あるでしょ。青とか赤とか黄色とか、普通の色が!」
藤村 「何で答えを押し付けるんですか? 私の心理でしょ?」
吉川 「そうだけ、そんなのずるいじゃん」
藤村 「ではずるい心理ということで」
吉川 「じゃさ、人がいます」
藤村 「はい」
吉川 「よかった。いますね。その人の着ている服の色は?」
藤村 「デ・ニーロ」
吉川 「いや、人じゃなくて服の色」
藤村 「デ・ニーロで」
吉川 「違う! 色!」
藤村 「だから、デニ色」
吉川 「何!? デニ色って!?」
藤村 「デニ色はデニ色ですよ」
吉川 「オリジナルカラーじゃん!」
藤村 「デニムの色だからデニ色ですよ」
吉川 「……青でいいかな?」
藤村 「デニ色です」
吉川 「はい、デニ色ね……。じゃ、その人は?」
藤村 「ロバートです」
吉川 「やっぱりロバート・デ・ニーロと……」
藤村 「ロバート・ケネディー」
吉川 「違うんだ! ここに来てデ・ニーロを裏切るんだ!」
藤村 「別に裏切った覚えは……」
吉川 「いちいち、天邪鬼だなぁ」
藤村 「あなたは人に物を押し付けるきらいがありますね」
吉川 「そ、そうですか」
藤村 「はい」
吉川 「自分では、気づかなかったなぁ……」
藤村 「心理テストで深層心理が浮き彫りになりましたから」
吉川 「ありがとうございました。先生」
藤村 「いいえ、どういたしまして」
暗転
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