本場インド

シェフ「イラサイマサラ~!」


吉川 「マサラって、使い方それであってるの?」


シェフ「本場インドでは常識マサラ~」


吉川 「じゃ、その本場インドのシェフが作るカレーを一つ」


シェフ「カシコマサラ~!」


吉川 「いや、やっぱマサラはおかしいだろ?」


シェフ「おかしいかな?」


吉川 「普通に喋れるじゃん」


シェフ「喋れないインド!」


吉川 「いやいや、語尾にインドってつけるインド人はいない」


シェフ「そんなこと、なインド!」


吉川 「あなた、本当に本場インド人のシェフ?」


シェフ「疑うのよくないアルヨ」


吉川 「アルヨが語尾に付くインド人いないだろ」


シェフ「それよりも、ご注文はカレーうどんでしたっけ?」


吉川 「いや、うどんじゃないよ! インドにないでしょ?」


シェフ「カレー南蛮?」


吉川 「そんなの本場インドにあるの!?」


シェフ「ないっけ?」


吉川 「いや、私に聞かれてもあなた本場のインド人でしょ?」


シェフ「そうですよ。インド生まれのヒップホップ育ち」


吉川 「別に育ちは聞いてない」


シェフ「カラいやつらはだいたい友達」


吉川 「友達もうちょっと選んだほうがいいよ?」


シェフ「何カレー? ククレ?」


吉川 「何! ククレって!? 本場じゃないじゃん!」


シェフ「本場インドのククレ地区で有名なのがククレカレーよ」


吉川 「あそうなの?」


シェフ「知らんけど」


吉川 「嘘かよ! ずいぶん自信マンマンに言いやがって!」


シェフ「で、注文は? ニラレバ?」


吉川 「なんでニラレバなの!? ここ、本場インドのシェフが作るカレー屋じゃないの?」


シェフ「そうだった。私は本場インドのシェフです。どうぞよろしく」


吉川 「あの、本場のカレーを」


シェフ「味はどうする? 甘酸っぱ。中辛酸っぱ。激辛酸っぱ。とあるけど」


吉川 「全部酸っぱいじゃん! カレーでしょ? 辛さでしょ?」


シェフ「あぁ、酸っぱくないバージョン?」


吉川 「酸っぱくなくていいですよ! 普通ので」


シェフ「辛さのレベルが42段階に別れてるけど、どのくらい?」


吉川 「別れすぎだろ。38とかどのくらい辛いんだ?」


シェフ「4以上は全部致死量ね」


吉川 「実質4段階じゃないか! じゃ、中辛で」


シェフ「カレーの方は、チキンとマトンと何かがあるけど、どれにする?」


吉川 「何かって何!? なんで濁してるの?」


シェフ「さぁ、何かは私の口からはちょっと」


吉川 「そんな気持ち悪いもの食べたくないよ!」


シェフ「ヒント。美味しくないです」


吉川 「そんなもの絶対に頼まない。チキンで」


シェフ「ライスとナンとカレーパンのどれにします?」


吉川 「カレーパンだけなんかおかしい。つけあわせようがない」


シェフ「逆転の発想でね」


吉川 「逆転しすぎだよ。戻って来い」


シェフ「じゃ、ライスとナンと何かのどれにします?」


吉川 「また、何かか。ナンでお願いします」


シェフ「ナンで?」


吉川 「はい、ナンで」


シェフ「なんでだろ~♪ なんでだろ~♪」


吉川 「なんだコイツ。わずらわしいなぁ」


シェフ「ジョン&パンチのマネです」


吉川 「誰だそれは! 白バイ野郎か!? そもそも、あんたインド人じゃないだろ?」


シェフ「そんなことなインド!」


吉川 「おかしいと思ってたんだよ。めちゃくちゃ色白だし」


シェフ「本場のインド人ですよ!」


吉川 「日本語めちゃくちゃ上手いじゃないか」


シェフ「じゃ、しょうがない。インド人の証拠見せるよ」


吉川 「なに?」


シェフ「象が、座って、立ち上がるときのマネ」


吉川 「そんなのされても」


シェフ「こう足を折りたたんでパオーン」


吉川 「わぁなんか、すげー上手い。なんでちゃんとできちゃってるんだ」


シェフ「どう? インド人でしょ?」


吉川 「いやいや、それは象のモノマネが上手い人の証拠であって、インド人の証拠じゃない」


シェフ「えー、すごい頑張ったのに!」


吉川 「確かに、象は上手かった。正直、引くくらい上手かった。それは認めるけどその色白さじゃなぁ」


シェフ「あぁ」


吉川 「なんで、そんなに色白なのよ?」


シェフ「本場のインドア派なもんで」



暗転

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