歯医者

歯医者「はい、吉川さん。口を大きく開けてください」


吉川 「は~ん」


歯医者「じゃ、まず麻酔を打ちますね。チクっとしますよ」


吉川 「はい」


歯医者「心が」


吉川 「心がっ!? 小さな罪悪感みたいに?」


歯医者「アリの大量虐殺」


吉川 「うわぁ、心がチクっとする!」


歯医者「もし痛かったら腕を」


吉川 「はい」


歯医者「腕を大きく上げて背伸びの運動~♪」


吉川 「え? キチンとするの? キチンと?」


歯医者「はい。大きく口を開けて、あごの運動~♪」


吉川 「運動!?」


歯医者「はい、あ~ん」


吉川 「は~ん」


歯医者「キュウィィィン」


吉川 「へんへい、いはいえふ」


歯医者「はい、喋らないで下さい」


吉川 「いはいえふ」


歯医者「はい、動かないで下さい」


吉川 「いはい!」


歯医者「無理やり、腕を大きく上げようとしないで下さい。治療の邪魔です」


吉川 「いはいいい!」


歯医者「なんですか? スカイ?」


吉川 「いはい!」


歯医者「フライ?」


吉川 「いはい」


歯医者「空を飛びたいってことですか?」


吉川 「ひはふ」


歯医者「突然、治療中にそんな夢見がちなことを宣言されても困ります」


吉川 「ひはふっへ!」


歯医者「とりあえず、悪いところは削りましたからかぶせものをしますね」


吉川 「うぅ」


歯医者「はい、これで、大丈夫だと思います」


吉川 「この! この名医!」


歯医者「そんな、突然褒められても」


吉川 「いや、こんなことを言いたいはずでは。全然痛くなかった!」


歯医者「やっぱり! 痛くなかったでしょ?」


吉川 「違う! 違うんだ! よくもこんな完璧な治療してくれてありがとう」


歯医者「お礼を言われる筋合いはありません。仕事ですから」


吉川 「ちくしょう! なんかしやがったな!」


歯医者「私は、ただかぶせものをしただけです」


吉川 「いったい何をかぶせた!?」


歯医者「きぬです」



暗転



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