埋蔵金

吉川 「なぁ、堀りに行こうぜ? 埋蔵金」


藤村 「やだよ」


吉川 「絶対出るから! 間違いないから」


藤村 「間違いだらけだ」


吉川 「確実な筋からの情報なんだよ。もう場所わかってるんだって」


藤村 「なんだ、確実な筋って」


吉川 「それはトップシークレットだよ」


藤村 「いつの間にトップに成り上がったんだ」


吉川 「じゃ、ただのシークレットだよ」


藤村 「そのシークレットを明らかにしてくれない限り、俺はのれない」


吉川 「なんだよわかった。言うよ」


藤村 「なに?」


吉川 「俺、納豆に砂糖入れるんだ」


藤村 「なんだそれは」


吉川 「俺のトップシークレット。言うなよ!」


藤村 「言わないし、聞きたくもない! なんだその地味なトップシークレットは」


吉川 「いやぁ、甘くなると美味しいんだよ?」


藤村 「秘密の内容のことじゃない。なんでお前の個人的なシークレットを聞き出さなきゃいけないんだ」


吉川 「そっちが聞いたからじゃないか!」


藤村 「そうじゃない。情報筋を明らかにしろって意味だ」


吉川 「なんだよぉ! シークレット、バラし損じゃん」


藤村 「たいしたシークレットでもない」


吉川 「誰にも言わないでね? 恥ずかしいから」


藤村 「わかったから、情報筋を言え」


吉川 「情報筋はもちろん、徳川だよ」


藤村 「えー! なんだそれは。子孫?」


吉川 「ううん。多分、子孫的な雰囲気の」


藤村 「なんで曖昧なんだ」


吉川 「ほら、内緒だよ? 俺、徳川の子孫なんだ」


藤村 「嘘つけ」


吉川 「俺の中の徳川DNAが埋蔵金の場所を確定した」


藤村 「もう全然信じる気にならない」


吉川 「ご先祖様! ありがとう」


藤村 「で、どこなんだ。場所は」


吉川 「うわぁ! 場所だけ聞いて先越すつもりだな」


藤村 「越さないし、つもらない」


吉川 「えー」


藤村 「大体の場所でいい。それで信憑性があるかないかわかるだろ」


吉川 「じゃ、だいたいね。うんと……、アメリカ」


藤村 「帰れ」


吉川 「違うの! 本当なの! 俺の徳川DNAがそう言ったんだって!」


藤村 「なんで徳川埋蔵金がアメリカにあるんだ。理由がわからない」


吉川 「ほら、13代目当主の徳川ジョージがさ」


藤村 「待て待て待て。全然おかしい」


吉川 「え? ミスタージョージ、トクガワ」


藤村 「そんな徳川聞いたことない。ふざけるな!」


吉川 「ふざけてるのはどっちだ! 俺は徳川の子孫だぞ。歴史に語られなかった裏のことも知ってるんだ」


藤村 「ものすごい自信マンマンで子孫を言い張った」


吉川 「で、その徳川ジョージが埋めたんだよ。埋蔵金」


藤村 「そんなわけない」


吉川 「ほら、だって証拠だってあるじゃん。埋蔵金って英語だぜ。マイ、MY、私の」


藤村 「嘘付け。蔵金はなんだ」


吉川 「えっとZOU……雑巾?」


藤村 「そんなもん埋めるなよ」


吉川 「違う! 象、KINGDAM。象の王国だ」


藤村 「徳川のじゃないのか。象か」


吉川 「徳川家は象の子孫なんだよ」


藤村 「とんでもない嘘をつき始めた。しかもメルヘンチックだ」


吉川 「象が進化した家系。それが徳川。ほら、カカトがコチコチ」


藤村 「お前の角質なんか知らない」


吉川 「すごいいっぱい出てくるぜ! 象牙とか象牙の印籠とか」


藤村 「象牙ばっかりじゃないか。まぁ、ある意味高価だけど」


吉川 「だろ? だから、堀りに行こうぜー!」


藤村 「行かない。そんな嘘っぱちにのれるか!」


吉川 「行くんだゾウ!」


藤村 「急に象語で喋ってもダメだ」


吉川 「お前が首を縦に振るまで、俺はテコでも動かないゾウ」


藤村 「勝手にしろ。いつまで続くか見ものだ」


吉川 「鼻を長くして待ってやるゾウ」


藤村 「上手いこと言ったつもりか」


吉川 「埋蔵だけに、上手いゾウ!」


藤村 「……ちょっと上手いな」



暗転



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