取引

藤村 「ブツは?」


吉川 「用意した」


藤村 「ほぉ、出所は?」


吉川 「余計なことに首を突っ込まない。この世界の掟だ。覚えておけ」


藤村 「OK。何も聞かないよ」


吉川 「さぁ、ブツを」


藤村 「金が先だ」


吉川 「まったく、少しは信用してもらいたいもんだな」


藤村 「他人を信用しないことが、この仕事を長く続けるコツだ」


吉川 「はは、まぁいい。ほらよ」


藤村 「……」


吉川 「上物のタラバだ」


藤村 「金を渡せ」


吉川 「リアクション薄い! なんだよせっかくタラバガニ用意したのに」


藤村 「金だ」


吉川 「もっと、あるじゃん。ノリツッコミ的な」


藤村 「金を出せ」


吉川 「うわぁ、こいつは新鮮だ。ジャンケンしちゃおう! ジャンケンパー! 負けたー!  チョキ出すってわかってたのに負けたー! って、これは蟹だ! 甲殻類だ! とか」


藤村 「money」


吉川 「チョキチョキチョキ。反復横飛びはまかせとけ!」


藤村 「なんのマネだ」


吉川 「カニのマネだ」


藤村 「いいから金をだせっ!」


吉川 「なに怒ってんのよ。はい」


藤村 「確かに」


吉川 「ブツを確かめさせてもらうぜ」


藤村 「あぁ」


吉川 「ほぉこりゃ、上物の金剛薬師如来だ。最高のブツだぜ」


藤村 「……」


吉川 「あのね、ブツと仏のブツをかけたの。どう?」


藤村 「……」


吉川 「なんでご機嫌斜めなの? 気圧のせい?」


藤村 「お前との取引はこれで最後にさせてもらう」


吉川 「え、なんで? あたい、つくしたじゃない! 捨てないでっ!」


藤村 「実にうざったい。ここで消えてもらおう」


吉川 「ままさかイリュージョン?」


藤村 「死んでもらう」


吉川 「ゴメンて! 本当にゴメンて! 怒んないで! もうしないから」


藤村 「最後に言い残すことはないか?」


吉川 「反省してます! 本当。心入れ替えた。人工心臓に!」


藤村 「あばよ」


吉川 「ぐわぁ。はっ!? 懐に入れた金剛薬師如来が救ってくれた!」


藤村 「運のいいやつだだが、二度はない」


吉川 「ぐわぁ。はっ!? 懐に入れた人工心臓が救ってくれた!」


藤村 「……」


吉川 「あのさいいじゃん。一度くらいつっこんでくれてもさ?」


藤村 「余計なことにつっこまないことが、この仕事の掟だろ?」



暗転



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