風邪

良子 「吉川くん、風邪ひいたってほんと?」


吉川 「うん」


良子 「そうだと思って援護にきたよ」


吉川 「援護じゃなくて介護ね」


良子 「まぁ。そうニュアンス的なもので」


吉川 「だいぶ、ニュアンスは違うと思うけど」


良子 「じゃ、フォーメーションQでいこう!」


吉川 「フォーメーションQ?」


良子 「私が右から回り込むから、吉川君は左から回り込んでっ!」


吉川 「いったいどこに回りこむつもりだ」


良子 「ベッドよ」


吉川 「いや、普通に寝かせてくれ」


良子 「添い寝するべき」


吉川 「いいよ。そっとしておいてくれ」


良子 「じゃ、わかった。精がつくように料理をしてあげる」


吉川 「そんな無理やり精をつけなくてもいいです」


良子 「良子特製おかゆを作るよ!」


吉川 「はぁ、ありがとう」


良子 「あらら! どうしましょ」


吉川 「どうした?」


良子 「おかゆ作ろうと思ったら、お米がない」


吉川 「あれ、なかったっけ?」


良子 「しょうがない、ブタの背油で代用しよう」


吉川 「いやいや、代用できないよ! 背油のおかゆって、どれだけコッテリすれば気が済むんだ」


良子 「だめ?」


吉川 「もっとお腹に優しいものを頼みたい」


良子 「じゃ、特製腹巻を作るわ!」


吉川 「いや、そういう意味じゃなくて。食べられないでしょ」


良子 「じゃ、食べられる腹巻を作る。昆布とかで!」


吉川 「そうじゃない! そこは間を取らないで欲しい」


良子 「じゃ、どうすればいいのよっ!」


吉川 「逆切れされても困る」


良子 「あ、これお米かな?」


吉川 「あるじゃないか」


良子 「てっきり大量のアリの卵かと思っちゃった」


吉川 「そんなもの保管してる家みたことない」


良子 「よぉし! 良子、腕を振るっちゃうぞ!」


吉川 「あぁお願い」


良子 「ブルブルブル」


吉川 「いや、二の腕をプルプルさせなくていいから」


良子 「良コプター!」


吉川 「わかったから」


良子 「よし来た長さん、まかせてホイ!」


吉川 「任せるからもう、早くしてくれ」


良子 「ババーン! もう完成!」


吉川 「早いな」


良子 「あれだよ。愛情たっぷりだよ」


吉川 「はぁ、ありがとう」


良子 「あと、劣情どっぷり」


吉川 「そんなもん入れるな」


良子 「えへへ」


吉川 「いただきまーす」


良子 「どう? 星はいくつ?」


吉川 「……」


良子 「星、5つです!」


吉川 「いやちょっとなんか苦い」


良子 「えへへ。隠し味に風邪薬を入れました」


吉川 「一緒に入れるなよ」


良子 「これですっかりよくなるよ」


吉川 「なんかどんどん具合が」


良子 「うつしていいよ」


吉川 「え」


良子 「ほら、うつすと良くなるって言うじゃない。吉川君ならいいよ」


吉川 「良子」


良子 「吉川くん」


吉川 「でもそれは、できないよ」


良子 「どうして私! 吉川君なら」


吉川 「良子馬鹿じゃん」


良子 「たしかに!」



暗転

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