ぺてんし

クワガタカブト

カブト　「なぁ、なぁ」

クワガタ「あ、カブトさん、チューッス！」

カブト　「あのさ、俺一つ聞きたいことがあってさ」

クワガタ「なんすか？」

カブト　「俺ってさ、最強じゃん？」

クワガタ「や、自分で言い切っちゃうのもすごいすけどまぁ、最強っすね」

カブト　「だよね。どう考えても強いもん」

クワガタ「そうっすね。そこら辺のアゲハとかじゃ百匹かかっても勝てないっすね」

カブト　「だよね、森の子リスくらいなら持ち上げられそうだもん」

クワガタ「これまた、大きく出ましたね。まぁ、できそうですけど」

カブト　「だよね。俺、最強なんだよ」

クワガタ「そうっすね」

カブト　「じゃさ、なんでおまえの方が人気あるの？」

クワガタ「え？」

カブト　「おまえの方が人気あるでしょ、ぶっちゃけ」

クワガタ「いやそんなこと」

カブト　「怒らないから言ってみ」

クワガタ「ちょっ！　浮いてる！　カブトさん、右半分浮いてるって！」

カブト　「別に俺は責めてるわけじゃないんだよ。実際どうなの？」

クワガタ「わかりました。人気あります！　だからおろして」

カブト　「やっぱり。そうだと思った」

クワガタ「でも、カブトさんも人気ありますよ」

カブト　「も！？　なに？　俺はお前の人気のついでか！　おこぼれで人気爆発か！」

クワガタ「イタタタ！　カブトさん、浮いてる、かなり確実に浮いてる！」

カブト　「裏っ返してお腹観察するぞ、コラァ！」

クワガタ「やめてー！　それだけはやめてー！」

カブト　「まぁ、いいや。でさ、何で人気あるの？」

クワガタ「何でっていわれても」

カブト　「なんかしてるの？　パーマあてたり？」

クワガタ「いや、パーマは当ててないですよ。どこに当てるんですか」

カブト　「ちょっと教えてよ。人気になるコツ」

クワガタ「そんなこと言われても、別になんとなく周りが言ってるだけで」

カブト　「あっそ。そういう態度とるんだ？」

クワガタ「ちょっ！　待って！　言います！　羽を開かないで！　無理やり硬い方の羽をこじ開けないで！」

カブト　「じゃ、教えてよ」

クワガタ「俺が思うに、あれじゃないっすかね。俺、身体弱いんすよ、意外と」

カブト　「あぁ、前もヒクヒクしてもんな」

クワガタ「あれはカブトさんが阿修羅バスターかけてきたからじゃないすか！」

カブト　「ばか！　あれはカブトバスター！　俺のオリジナル」

クワガタ「一緒にやられたカナブンは足二本もげてたっすよ！」

カブト　「そのうち生えるんじゃね？」

クワガタ「生えないっすよ、多分」

カブト　「だってしょうがないじゃん。あいつ、なんか変な汁だしてたし」

クワガタ「体液っすよ！　瀕死ですよ！」

カブト　「俺、最強だからなぁ」

クワガタ「最強っすけど」

カブト　「で、身体が弱いといいの？」

クワガタ「すぐ死んじゃうんで、みんな親切にしてくれるんすよ」

カブト　「じゃ、俺も弱くなろうかなぁ」

クワガタ「カブトさん弱くなったら魅力半減っすよ！」

カブト　「なんだよそれ、じゃダメじゃん。もっと効果的なのない？」

クワガタ「は？　効果的って？」

カブト　「いきなり人気になる方法」

クワガタ「えー、そんなこと言われても」

カブト　「だってお前、グロいダイヤだろ？」

クワガタ「黒いっすよ！　グロいとか誉めてないじゃないですか」

カブト　「本当は内緒の技とかあるんじゃねーの？」

クワガタ「そんなの、ないっす」

カブト　「カブトバスター！」

クワガタ「ちょっ！　やめて！　首をしっかりと固定しないで！」

カブト　「数字の8は、横にすれば∞！」

クワガタ「意味わからない！　ちょっと！　言います！　飛ばないで！」

カブト　「早くいえよ」

クワガタ「いてぇ、あれっすよ。目とか」

カブト　「目？」

クワガタ「そうなんていうんすかね、こう、つぶらな目で、上目遣いに」

カブト　「こう？」

クワガタ「いや、もっと潤ませて。えーと、チワワ的な」

カブト　「なんだよ！　チワワ的って」

クワガタ「犬のあの、市川実和子に似た犬っすよ」

カブト　「市川実和子がわからない」

クワガタ「人気の犬なんすよ」

カブト　「犬かぁこう？」

クワガタ「カブトさん、身体が大きいから、あんまり上目遣いにならないっすね」

カブト　「なんだよぉ」

クワガタ「だって、俺、平面的じゃないっすか、薄ぅ～い」

カブト　「薄いな。ぺったんこだ」

クワガタ「ひらべった～い」

カブト　「俺、立体感あふれてるからな」

クワガタ「いまあれっすよ。2.5次元ってのが流行ってるんですよ。多分よく知らないっすけど俺みたいのかなーって」

カブト　「俺は完全に3次元だな」

クワガタ「もうちょっと、つぶれた方が可愛くなるんじゃないすかね？」

カブト　「じゃ、ちょっとつぶしてよ。ハサミで」

クワガタ「えー！　いいんすか？」

カブト　「いいよいいよ。やってくれ」

クワガタ「じゃ、お言葉に甘えてえい」

カブト　「痛い！　いてーよ！　馬鹿！　そこ、あれじゃねーか！　頭と胴の間のくぼみじゃねーか！」

クワガタ「え？」

カブト　「バカ！　痛いよ！　比較的柔らかめのポジションじゃねーか！」

クワガタ「ダメっすか？」

カブト　「フザケンナばか！　ちくしょう！」

クワガタ「わぁ！　やめて！　裏っ返さないでー！」

カブト　「お腹周辺をつぶさに観察してやるの刑だ」

クワガタ「薄い！　薄い本になっちゃうぅ～！」

暗転