面影

吉川 「……あれ?」


藤村 「あ……」


吉川 「えっと……」


藤村 「どうも」


吉川 「あ~、え~と……」


藤村 「え~……」


吉川 「あの……。あれですよね?」


藤村 「はい?」


吉川 「どこかでお会いしたことありますよね?」


藤村 「あ~、やっぱり?」


吉川 「えっと……取引先の……」


藤村 「え」


吉川 「染谷常務?」


藤村 「いや、違います」


吉川 「あ、違いましたか。失礼しました。そうだった、染谷常務はリストラされたんだった」


藤村 「いやはや、それはお気の毒に」


吉川 「と言うことは……もっと昔か……。あっ! 小学生の頃! ワキゲ博士でしょ!」


藤村 「いや、違います」


吉川 「ワキゲの生態に異常に詳しいために、あだ名がつけられたワキゲ博士だ!」


藤村 「ワキゲの生態ってなんだ」


吉川 「そうだよ! 絶対そうだ! 博士ー! ワキゲ博士ー!」


藤村 「いやいや、本当に違います」


吉川 「え……。あ、そういえばワキゲ博士は刑務所の中だった」


藤村 「そんな人と間違えないで下さい」


吉川 「あ、山ちゃん? 山ちゃんでしょ!? ラクダ同好会で一緒だった!」


藤村 「違います。ラクダ好きだったことは一度も無い」


吉川 「ウソだ! 山ちゃんだよ! ほら、俺が一コブ派で、山ちゃんが二コブ派で、いつも殴り合いの喧嘩してたじゃないかぁ。いやぁ、懐かしいなぁ」


藤村 「だから、山ちゃんじゃないです。コブの数でもめたりなんかしない」


吉川 「あ、そうか……。山ちゃんはラクダを求めて鳥取に引っ越したんだった……」


藤村 「鳥取に引っ越す理由がラクダって人がいるのか」


吉川 「鳥取の山ちゃんがこんなところにいるはず無いか。……と言うことは、あ!」


藤村 「あ?」


吉川 「ケビン! いやぁ~懐かしいなぁ! ケビンじゃないか!」


藤村 「日本人です」


吉川 「ケビンだろ? 面影あるよぉ、靴下とか!」


藤村 「靴下で記憶するのはちょっとおかしい」


吉川 「あの後、どうしたの? ケビンが開発した毒ガスのせいで村中大パニックだったじゃない」


藤村 「どんな人物と間違えてるんだ」


吉川 「いやぁ~、あの時は笑ったよ。主に毒ガスで」


藤村 「全然笑えない」


吉川 「それはそうと、背、縮んだ? 昔は4メートル近くあったじゃん」


藤村 「会って見たい! そんなケビンには会って見たい!」


吉川 「でも、それ以外はあんまり変わってないなぁ」


藤村 「身長がそれだけ変われば別人だ。俺はケビンじゃない」


吉川 「え? ケビンじゃないの?」


藤村 「イエス」


吉川 「やっぱりケビンだー!」


藤村 「今のウソ。ケビンじゃないです」


吉川 「そうか。そう言えば、ケビンは蜂の巣にされたんだっけ……」


藤村 「うわぁ、ひどい」


吉川 「蜂に」


藤村 「蜂にされたの!? 巣に!?」


吉川 「ケビンじゃないとすると。……あっ! ひょっとして!」


藤村 「そろそろ当てて欲しい」


吉川 「良子!? いやぁ~、髪型変わってたからわからなかったよ」


藤村 「男だ! 髪型問題じゃない」


吉川 「ちょっと痩せた?」


藤村 「だから違うって! 人の話を聞け!」


吉川 「あ、良子は俺の女房だった」


藤村 「どうして間違えるんだ! ふざけてるのか?」


吉川 「と言うことは、……DF3305? お手伝いロボの!?」


藤村 「ロボじゃない! 人! アイアムヒューマン、アンダスタン?」


吉川 「そうだった。DF3305は俺の想像上のロボだった」


藤村 「わざとでしょ? ね、絶対わざとでしょ?」


吉川 「えっと……。ヒントは?」


藤村 「ヒントとかいう問題じゃ」


吉川 「待って! え~とね、もしかして……SMAPのメンバーにいた?」


藤村 「いない。それならもっと早くわかれ」


吉川 「じゃ、あれだ。何かの学生チャンピオンだった!」


藤村 「何かってなんだ」


吉川 「趣味はリリアン?」


藤村 「だとしたら誰なんだ」


吉川 「ヒントで住基ネットの番号教えて!」


藤村 「それでわかっちゃうのか!」


吉川 「その声……その話し方……思い出した!」


藤村 「やっとか……」


吉川 「誰かに似てる知らない人だ。はじめましてっ!」


藤村 「はい。はじめまして」



暗転




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