ロボ
博士 「吉川君、ついに完成じゃ」
吉川 「ついに……」
博士 「あぁ。これより人類は新しい時代に入る」
吉川 「しかしなんで急にこんなものを」
博士 「しかたがない。これも世の流れというものだ」
吉川 「だって、巨大ロボなんて。マンガやアニメじゃないんですよ?」
博士 「人間のテクノロジーはそれを現実化するまで至った。製作は必至というものだよ」
吉川 「こんなもの作って、怪獣が現れるでもあるまいし」
博士 「吉川君、こんな言葉を知っているかね?」
吉川 「なんですか?」
博士 「結婚には大切な三つの袋がある」
吉川 「はぁ。聞いたことありますけど……」
博士 「やはり」
吉川 「それがなにか?」
博士 「やめじゃ」
吉川 「どうしたんですか? いったい!」
博士 「明日のスピーチで言おうと思ったんじゃが。やっぱりやめじゃ」
吉川 「スピーチ!? いや、なんですか?」
博士 「結婚式の」
吉川 「え? 全然話し変わっちゃってるの?」
博士 「この巨大ロボにも関わることじゃ……そう。人類の命運にも」
吉川 「結婚式がですか?」
博士 「うむ」
吉川 「誰の?」
博士 「藤村」
吉川 「それはいったい……誰ですか?」
博士 「友人代表じゃ」
吉川 「……え?」
博士 「いや、やつの友人の代表がわしなんじゃ。別にわしの友人代表じゃない」
吉川 「そうじゃなくて、なんでそれで、このロボが?」
博士 「もし、明日のスピーチに失敗したら……このロボは暴走する」
吉川 「えー! って、それって暴走させると言うことですか?」
博士 「ある意味、そうじゃ」
吉川 「ある意味とかじゃなくて、そうなんでしょ? やめてくださいよ! 大人気ない」
博士 「これも必然じゃ」
吉川 「違うでしょ! 個人的な理由でしょ?」
博士 「だって、はずかしいじゃん」
吉川 「だからって世界を滅ぼすなよ! 世界に対してライト感覚すぎだよ!」
博士 「スマン。だが、もうプログラムしてあるのじゃ」
吉川 「え……」
博士 「私が恥ずかしくて死にそうになったら、このロボは暴走する」
吉川 「そんなプログラム消してよ! やだよ」
博士 「ロボの基礎プログラムの根幹に根付くものだからな。消去は不可能じゃ」
吉川 「なんでそんなことするの!」
博士 「魔がさした」
吉川 「ささないでよ! なに、さしちゃってるのさ! バカ!」
博士 「ゴメンね」
吉川 「ゴメンじゃすまない! もう! どうするの!」
博士 「対処法は、ただひとつ。わしが、恥をかかないことじゃ!」
吉川 「そんな……。いくらなんでも無理だ」
博士 「大丈夫。こう見えても、わしは鉄の心を持ったおろこだ!」
吉川 「おろこ?」
博士 「男!」
吉川 「噛んだの?」
博士 「……」
ロボ 「……ギギギギギ……」
暗転
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