半魚人


吉川 「おっ! 大物だ! フィッシュオ~~ン☆」


   「ぷはぁっ!」


吉川 「……え?」


   「ぴちぴち♪」


吉川 「……え!?」


   「釣られちゃった」


吉川 「半魚人?」


半魚人「人魚です」


吉川 「嘘つけ! 半魚人じゃないか!」


半魚人「ごめんなさい。見栄張りました」


吉川 「見栄なんだ。人魚って詐称するのは見栄なんだ」


半魚人「人魚だったらしゃべれるはずないですよね?」


吉川 「いや、そういう問題じゃないだろ」


半魚人「そういう問題じゃなかったですか」


吉川 「というよりも、お前の存在そのものが大問題だ」


半魚人「え? ウソッ? シャツ後ろ前?」


吉川 「そうじゃない! そんな些細な問題じゃなくて、そもそもシャツ着てない!」


半魚人「キャーッ! 私ったら半裸!」


吉川 「全裸だ」


半魚人「見いひんといてー!」


吉川 「いや、見るよ! そんな不思議生命体は見ちゃうよ!」


半魚人「堪忍な~」


吉川 「なんだ、お前。ちょっとムカツクなぁ」


半魚人「それほどでもないですよ」


吉川 「自分で否定するな。しかも謙遜して」


半魚人「ほほぉ……。釣りですかな?」


吉川 「なに、普通に日常会話を繰り広げてるわけ? 自分、釣られたくせに」


半魚人「ほっほっほ。こりゃ、一本釣られました」


吉川 「え、と……。ダジャレなのか?」


半魚人「ところで、ハマちゃん」


吉川 「ハマちゃんじゃない」


半魚人「釣りしてるのに!?」


吉川 「釣りしてたら誰でもハマちゃんか」


半魚人「タマちゃん?」


吉川 「どっちかというと、おまえの方がタマちゃんチックだろ」


半魚人「わかった! スーさん?」


吉川 「違うッ! しかも、ちょっとなれなれしい」


半魚人「スーザン?」


吉川 「誰だ!? 外人女子か」


半魚人「ミセススーザン?」


吉川 「既婚者なんだ」


半魚人「ところで、スーザン」


吉川 「スーザンを肯定した覚えはない!」


半魚人「じゃ、誰なんだよ!」


吉川 「いや……。別に名乗る筋合いもないし、そもそもお前は誰だ」


半魚人「俺? 俺はさかなクン」


吉川 「どさくさにまぎれて、詐称するな。さかなクンは人間だ!」


半魚人「はたしてそうかな?」


吉川 「そこを掘り下げると面倒くさいことになりそうだからやめろ!」


半漁人「さかなクン的な半魚人?」


吉川 「人の部分も別にさかなクンじゃないだろ」


半魚人「半さかなクン人」


吉川 「そこはもう掘り下げたくないんだって。概念がややこしいんだから!」


半魚人「じゃ、半魚さかなクンじゃない人」


吉川 「それは、ただの半魚人だ」


半魚人「ただの、とか言うな! 俺は高貴な半魚人」


吉川 「半魚人に高貴とかあるんだ」


半魚人「あるよ! 俺は、むしろ半魚貴婦人」


吉川 「メスだったんだ」


半魚人「オホホ」


吉川 「気持ち悪い。もう海に帰ってくれ」


半魚人「そうはいかない。釣られたからには、あなたがご主人様だ」


吉川 「えぇ! そんな設定だったんだ」


半魚人「はい。私も今思いつきました」


吉川 「え~。なんかやっつけっぽいな」


半魚人「とりあえず、釣りのお手伝いを……あべっ!」


吉川 「ちょっ! お前なにやってんだよ!」


半魚人「……全部逃がしちった」


吉川 「ちったじゃないよ! どうしてくれるんだよ」


半魚人「ど、どうしましょうね?」


吉川 「お前、もう、邪魔! 海に帰れ! この役立たずがッ!」


半魚人「すみません。まだまだ、半人前なもんで」



暗転




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