1万人目


店主 「おめでとうございまーす!」


吉川 「わぁ! びっくりした。なんですか?」


店主 「お客様は当店のちょうど一万人目のお客様でーす!」


吉川 「あ、そうなんですか」


店主 「つきましては、当店よりこころばかりの贈り物を差し上げたいと思います」


吉川 「あ、ありがとうございます。なんか、すみませんね」


店主 「いえいえ、ではプレゼントの歌です」


吉川 「え? 歌?」


店主 「い~ちま~んに~ん、トゥ~ユ~♪」


吉川 「歌て。ハッピーバースデーのメロディーだし」


店主 「い~ちま~んに~ん、トゥ~ユ~♪ い~ちま~んに~ん、ディ~ア……」


吉川 「……」


店主 「ディ~ア……?」


吉川 「あ、吉川です」


店主 「ディ~ア、ア吉川デス~様♪」


吉川 「『あ』と『です』はいらない」


店主 「ハッp……っちま~んに~ん、トゥ~ユ~♪」


吉川 「今、間違えたでしょ。普通にハッピーって言ってたもん」


店主 「おめでとうございます」


吉川 「あ、ありがとうございます」


店主 「それでは、見事一万人目を達成した吉川さんにインタビューしたいと思います」


吉川 「えぇ、急にそんな」


店主 「やりましたね?」


吉川 「はぁ」


店主 「今日はやっぱり、狙ってました?」


吉川 「いや、全然狙ってません。知りませんでした」


店主 「またまたご謙遜を。では日ごろの訓練の賜物というわけですか」


吉川 「いったい、何を訓練すればできるのかもわからない」


店主 「比較的リラックスされて入店されましたが、そのあたりは何か特別なことでも?」


吉川 「いや、お店はいるのに緊張していかないでしょ。普通」


店主 「さすがですねぇ。やはりプロの意地ですか」


吉川 「プロってなんですか。なんのプロ?」


店主 「では、死んだお母さんに一言」


吉川 「母は生きてますよ! まだ元気です」


店主 「そうですかー。では私の死んだ母に一言」


吉川 「いや、全然知らないし、一言差し上げる筋合いもないと思われますが」


店主 「ありがとうございました。以上です!」


吉川 「どこに向かってしゃべってるんですか?」


店主 「それでは副賞としまして……」


吉川 「やった! ……ぶっちゃけ今までのはどうでもよかった」


店主 「モノマネを授与いたします」


吉川 「え、モノマネて……」


店主 「え、モノマネて……」


吉川 「ななな、何!? 俺のモノマネ?」


店主 「ななな~! 何? オラのモノマネでケロ?」


吉川 「ケロて、勝手なキャラ付けされてるし」


店主 「勝手なキャラ付けしないで欲しいケロ!」


吉川 「もはや好き勝手やられてる」


店主 「それでは、歌うケロ!」


吉川 「もういいです。モノマネ結構。というか、モノマネじゃないだろ」


店主 「そうですか? あと15分くらいはいけますけど?」


吉川 「いいよ15分もモノマネされても困る」


店主 「それでは、ありがとうございました。またのご来店をお待ちしております」


吉川 「え? 終わり?」


店主 「はい。ありがとうございました」


吉川 「えっと、あの。ここのお店は……」


店主 「あ、オプションですか? ただ今なら、10万人目のお客様用プログラムもご用意しておりますが」



暗転




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る